同性パートナーに子供がいる場合の親権や医療行為への同意

同性パートナーが以前結婚していたりして、子供がいる場合はその子供との法的な関係はどうなるのでしょうか。
例えば、子供の体調が悪くなったりして、治療が必要になったときに親権者でないパートナーが医療行為の同意などはできるのでしょうか。
今回は、同性パートナーに子供がいるときに、法的な手続きができるかを解説していきたいと思います。
同性のパートナーの相続問題と生命保険手続きLGBT

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目次

同性パートナーに子供がいる場合の手続き

同性パートナーが結婚していて、子供がいる場合は手続きをとる必要があるのでしょうか。
同性パートナーに親権がある場合は、そのパートナーが、その子供に対しての決定権があります。
同性パートナーは養子縁組しない限り、法的な権限を行使することはできません。
後から解説しますが、同性パートナーの子供を養子縁組すると親権が養親に移ってしまうため、あまりお勧めしておりません。
子供と3人で生活している場合でも、親権を行使できるのは同性パートナーになるため、法的な手続きなどはパートナーが行うことになります。

同性パートナーの子供が病気をした場合

小さい子供は急に病気になったりすることがあり、緊急手術となれば、幼い子供には医療行為への同意能力がないので、最悪の場合は手術ができません。
意思が医療行為をするには、医療診療契約とは別に、原則として、医療行為について患者から同意を得る必要があります。

同意を得ないで医療行為をした場合

医療行為といえども、治療の際に患者の体を傷つけることもありますので、同意がない場合は民法の不法行為、刑法では傷害罪に該当してしまう可能性があるため、原則として、同意を得て医療行為をします。

医療行為の同意能力

医療行為の同意能力とは、医療行為の意義と内容とリスクを理解して判断できる能力の事を言います。
親権を持っている者は、監護教育上必要な措置をとることが親権の内容に含まれているとされており、同性パートナーに親権がある場合は未成年者に代わって同意することが可能ですが、親権者でないものは未成年者に代わって同意をすることは難しいと考えられます。

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同性パートナーの子供を養子縁組する際の注意点

医療行為の同意や法律的な手続きは、同性パートナーが子供の親権者であるならその方が行います。
同性パートナーと子供とご自身の3人で生活しているのに子供の決定権に関しては、同性パートナーしか保有していないことになります。
親権のないパートナーには、医療行為の同意をしたり、法律的な同意をするには普通養子縁組することが考えられますが、お勧めはできません。
日本の法律では、男女の婚姻した夫婦であれば、夫婦の一方が他の一方の子を養子にした場合は、夫婦が共同親権を行使できますが、同性パートナー同士ではこの規定は適用されず、子供を養子にすると養親に服するとされ、親権を行使するのは、養親になった者になってしまいます。(民法820条)
つまり、同性パートナーの親権が養親である方に移ってしまうということになります。
結局パートナーのどちらか片方しか親権を行使できないばかりか、何らかの理由でパートナー同士が破局した場合は、後から手続きが大変になります。

(親権者)
第八百十八条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

民法 | e-Gov法令検索より引用

未成年後見制度とは

親権のあるパートナーが、亡くなった後に子供の面倒は誰が見るのでしょうか。
同性パートナーに親権がある場合は、同性のパートナーが医療故意有為や法律的な同意を行えば良いですが、仮に同性パートナーに何かあった場合はどうなるのでしょうか。
未成年者に対して、親権を行う者がいないときは未成年後見人が選任されることになりますが、未成年後見人はどうやって選任されることになるのでしょうか。
未成年後見人は、指定未成年後見人と選任未成年後見人に分けられます。
指定未成年後見人
指定未成年後見人は、未成年者に対して最後に親権を持っている者が遺言で未成年後見人を指定するケースと、親権を持っている父母の一方が管理権を有しないとき、他の一方が遺言で未成年後見人を選任するのもがあります。
選任未成年後見人
選任未成年後見人とは、家庭裁判所が審判によって未成年後見人を選任した場合をいいます(民法840条)
同性パートナーが片方のパートナーを遺言んで未成年後見人に指定した場合は未成年後見人となります。
ただ、子供の実の父親が生きている場合は、未成年後見人を選任していても、その方が親権者の変更が可能とされていますが、最終的には家庭裁判所が判断することになります。
仮に同性パートナーが親権変更の審判を申し立てた場合は、家庭裁判所の審判において親権者を元夫に変更すると判断がされ、親権者変更審判に基づき変更届が受理された場合は後見が終了され、子供の未成年後見人ではなくなってしまいます。

(未成年後見人の指定)
第八百三十九条 未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
2 親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。
(未成年後見人の選任)
第八百四十条 前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様とする。
2 未成年後見人がある場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者若しくは未成年後見人の請求により又は職権で、更に未成年後見人を選任することができる。
3 未成年後見人を選任するには、未成年被後見人の年齢、心身の状態並びに生活及び財産の状況、未成年後見人となる者の職業及び経歴並びに未成年被後見人との利害関係の有無(未成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と未成年被後見人との利害関係の有無)、未成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
(父母による未成年後見人の選任の請求)
第八百四十一条 父若しくは母が親権若しくは管理権を辞し、又は父若しくは母について親権喪失、親権停止若しくは管理権喪失の審判があったことによって未成年後見人を選任する必要が生じたときは、その父又は母は、遅滞なく未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。

民法 | e-Gov法令検索より引用
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まとめ

同性パートナーに連れ子がいる場合は、親権のあるパートナーが医療行為の同意や法律行為の同意をします。
男女の夫婦と違い連れ子を養子にしてしまうと、親権が養親に移ってしまいますので、結果的に意味がなくなってしまうので、普通養子縁組することはお勧めできません。
同性パートナーに何かあった場合の保険として遺言を作成して、パートナーを未成年後見人に選任することによって、自分が信頼できる人にお子さんを任せられます。

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記事の内容は一般的な内容となっており、個別具体的な案件によっては結論が異なることもございます。
そのため、ご自身でお手続きをする際は、自己責任でお願い致します。

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