遺言書に自分の葬儀の方法などを記載する方がいらっしゃいますが、遺言書に記載して法的に効力がある事項は限られており、それ以外の事を記載しても、法的な強制力はありません。
今回の記事では、遺言書に書いて法的な拘束力が発生する事項について解説していきたいと思います。
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遺言書の効力
遺言書は、どんな内容を書いても、法律的な効力があるのでしょうか。
民法では、遺言書に記載する内容について規定はありませんので、基本的に何を書いても自由ですが、法律的な拘束力があるのは、民法の条文で記載のあるものだけ、法律的に効力があります。
それ以外の内容に関しては、法的には拘束力のないメッセージとなってしまいます。
法的に効力のある遺言書の記載事項
民法に記載があり、法律で意味がある内容は、遺産分割に関すること、認知など相続人に関することなど12項目があります。
ただし、法的に効力がある内容でも、法令に違反する内容だと、無効になる可能性もあります。
法定相続分と違う割合の相続分にする遺言
法定相続分と異なる割合で、相続させる場合は、遺言書を書くことによってスムーズにできますし、割合を決めるのを遺言者でなく、第三者に委託することもできますが、法定相続分と異なる遺言書を作成する場合には、遺留分に注意が必要です。
財産の全部または一部を遺贈する遺言
財産を特定して、遺言書で贈与する場合を、特定遺贈といいますが、その場合は、どの財産を贈与するのかを、特定する必要があります。
一人暮らしで、ペットがいる場合には、負担付き贈与をすることで、財産をあげる代わりにペットの世話をさせることも可能です。
特別受益者の持戻しを免除する遺言
特定の相続人に生前贈与がある場合に、亡くなった方は、遺言で持戻しを免除する内容を記載する事ができます。持戻しの意味などについては、以前のブログで説明してありますので、宜しければ、ご覧ください。
一定期間、遺産分割を禁止する遺言
相続が開始した後に、相続人全員で遺産分割協議を行いますが、遺言によって、5年を超えない期間遺産分割を禁止できます。
相続人全員の合意があれば遺産分割できるとされています。
推定相続人の廃除または廃除を取り消す遺言
遺言執行者によって家庭裁判所への廃除(相続権を廃除すること)の請求が必要です。
遺言で遺言執行者を指定しておく必要があります。指定しないと家庭裁判所で選任されます。
共同相続人間における担保責任を指定する遺言
遺産分割で、相続人が取得した財産に瑕疵(欠陥)がある場合は、他の相続人は担保責任(物の欠陥に対しての責任)を負いますが、遺言によって変更することが可能です。
遺言執行者を指定及び指定の委託をした遺言
遺言の内容を執行する人を決められますが、未成年者や破産者を指定することはできません。
相続人以外の者への遺贈、寄付をする遺言
相続人以外にも財産を贈与することが可能です。
遺贈による遺留分の侵害で民法の遺留分の割合と異なる意思表示をする遺言
複数の遺贈が、他の相続人の遺留分を侵害する内容であった場合には、遺言者は別段の意思表示をしたときは、その内容に従います。(遺留分の請求は預金のみとするなど)
認知をする遺言
遺言で認知をすることができます。
認知をする場合には遺言執行者を定めてください。
未成年者後見人の指定する遺言
遺言で未成年者の後見人を定めることができますが、未成年者、破産者などを定めることはできません。
信託の設定をする遺言
遺言により信託の設定ができます。
公益的な目的のために財産の一部を活用した場合、遺言者の死後、遺族などへ給付を行うことができ、遺言で一定の内容を記載することができます。
まとめ
遺言は、どんな内容を記載しても問題ありませんが、法的に効力がある内容は、民法で決まっています。
遺言書を作成する際には、遺留分など法律的な問題が生じることが多くありますので、遺言書を自分で作成する際には、事前に知識を付けるか、士業など専門家に相談してください。
※遺言・相続手続きでご不明点がございましたら、是非当事務所に下記の問い合わせフォームからご相談ください
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