在留資格「技術・人文知識・国際業務」の業務内容基準|現場作業の許容範囲と判断のポイント

在留資格ビザ(VISA)

「この業務内容で、本当に在留資格(ビザ)の許可が下りるだろうか」「採用後に『不法就労助長』と指摘されたらどうしよう」……。外国籍の方を採用する際、実務担当者が抱くこうした不安はごく自然なものです。

在留資格の判断は、単に「法務省のホームページに書いてある条件を満たせばOK」というほど単純ではありません。企業の規模や職務の細かな実態によって、結論が分かれるケースも多いためです。

本記事では、プロの視点から「自社で客観的に判断できるポイント」と「専門家へ相談すべき境界線」を整理します。

まずは状況を可視化し、リスクを適切にコントロールするための第一歩としてご活用ください。

在留資格と「業務内容」の基本的な考え方

在留資格とは、外国籍の方が日本に滞在し、特定の活動を行うための「入国管理上の許可」です。就労を目的とする場合、その資格ごとに「従事できる業務内容」が厳格に定められています。

実務上、最も重要なのは「業務内容=職務記述書(Job Description)の内容 + 現場での実態」で判断されるという点です。たとえ書類上の職種が「通訳」であっても、一日の大半を工場のライン作業(単純作業)に費やしている場合は、資格外活動とみなされるリスクがあります。

判定の基本軸

  1. 専門性: その業務に学術的・専門的な知識が必要か
  2. 整合性: 本人の学歴や経歴と、業務内容がマッチしているか
  3. 継続性・安定性: その業務が一時的ではなく、継続して存在する規模か

同じ「事務職」でも、高度な会計知識を用いるのか、定型の入力作業のみなのかで、該当する在留資格は変わります。条文の文言だけで判断せず、「現場で誰が、何のために、どう動くのか」を具体化することが、判断の出発点となります。
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自社でまず確認すべき“一次判断”チェックリスト

採用の初期段階で、人事担当者が自力で確認できる項目を整理しました。以下の項目を埋めるだけで、状況の解像度が上がります。

  • [ ] 求人票(J/D)の有無: 求める役割が言語化されているか
  • [ ] 学歴・職歴の確認: 卒業証明書や経歴書と、業務に関連性があるか
  • [ ] 業務時間の内訳: 専門的業務と、それ以外の付随業務の比率はどの程度か
  • [ ] 給与水準: 日本人が同職種に従事する場合と同等以上の報酬
  • [ ] 就業場所: 実際の勤務地はどこか(派遣先や顧客先を含む)

簡易判定の目安

  • 【良好】 学歴と業務が直結し、報酬も日本人と同等。J/Dが明確。
  • 【注意】 業務内容に「現場研修」などの単純作業が長期間含まれる。
  • 【要相談】 学歴とは無関係な職種への配置や、極端に低い報酬設定。

まずは、これらの情報を「証拠資料」として揃えられるかどうかが、自社判断の限界点を見極める目安になります。
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判断が分かれやすい「グレーゾーン業務」一覧と考え方

実務で最も頭を悩ませるのは、専門性と単純作業が混在するケースです。これらは「グレーゾーン」として、慎重な検討が求められます。

典型的なグレーケース

  1. 販売・営業での実務: 単なるレジ打ち(単純作業)か、製品の技術的解説を伴うコンサルティング(専門業務)か。
  2. 事務補助: 誰でもできるデータ入力か、財務諸表の分析を伴う会計補助か。
  3. 多職務の兼務: 翻訳業務を行いながら、在庫管理や梱包も手伝わせる場合。

判断の分かれ目

ポイントは「主たる業務」が何かです。付随的に発生する単純作業は許容される傾向にありますが、その範囲をどこまで広げてよいかは、個別の状況(企業の事業規模、配置の必要性など)に左右されます。

リスクを抑えるためには、「職務分掌(誰がどの責任範囲を担うか)」を明確にし、マニュアルや評価制度に反映させておくなどの実務的な工夫が有効と考えられます。
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在留資格ごとの具体的な判定ポイント

代表的な就労資格について、実務担当者が特に注目すべき「急所」をまとめました。

  • 「技術・人文知識・国際業務(技人国)」
    大学等での専攻内容と、職務の「関連性」が厳しく問われます。例えば、経済学部卒の方がITエンジニアとして働く場合、履修科目や実務経験の裏付けが必要です。
  • 特定技能
    特定の産業分野(外食、建設など)に限定されます。技能試験の合格や、国が指定する「登録支援機関」によるサポート体制が整っているかが鍵となります。
  • 技能
    調理師や加工職人など。「10年以上の実務経験(国により異なる)」などの客観的な証明書が必須であり、自己申告だけでは不十分とされることが多いです。
  • 「高度専門職」
    年収、学歴、年齢などをポイント換算します。「ポイントの証拠書類(年収見込証明書など)」が正確に準備できるかが分かれ目です。

よくある誤解: 「日本語が話せるから通訳として採用できる」と考えがちですが、実際には「通訳業務がフルタイムで発生するほどの業務量」があることを立証しなければならない点に注意が必要です。
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自社で判断できること/判断が難しいこと(整理表)

自社で完結させてよいのか、外部の知見を借りるべきかを整理した比較表です。

項目自社で判断専門家に相談必要な資料・根拠
求人内容と実務の一致勤務実態、シフト表、週報
給与水準の妥当性賃金規定、近隣他社の相場
学歴と業務の関連性履修科目、卒業証明書
兼務業務の許容範囲職務分掌図、業務比率表
派遣先での業務実態×派遣契約書、指揮命令系統図
過去の入管の不許可事例×最新の審査傾向、行政指導例

【解説】
「○」の項目は、社内規定や帳票で客観的に示せるため、自社で整理可能です。「△」は、社内で理屈を立てた上で、一度セカンドオピニオンを仰ぐのが安全です。「×」は、法改正や入管の最新の運用(審査のさじ加減)が関わるため、専門家への相談を推奨します。
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相談するならいつ・誰に・どんな情報を準備すべきか

「判断が難しい」と感じた場合、いつ、誰に相談すべきでしょうか。

相談のタイミング

  1. 内定を出す前(雇用契約を結ぶ前)
  2. 現在の在留資格を更新・変更する3ヶ月前
  3. 大規模な組織変更や職務変更が発生する時

相談先の使い分け

  1. 行政書士(申請取次): 書類作成と入管への申請実務のプロ。
  2. 弁護士: 法的紛争(不法就労の指摘など)のリスク対応。
  3. 社会保険労務士: 雇用契約書や社内規定の整備、労務管理全般。

準備すべき資料

相談時に以下の「事実」を揃えておくと、回答の精度が上がります。

  1. 本人の履歴書・パスポート・在留カードの写し
  2. 会社の決算資料(直近1〜3期分)
  3. 具体的な「一日のスケジュール(案)」
  4. 現在の同ポジションの日本人従業員の給与額

まずは状況整理から:簡易チェックシートと次の一歩

最後に、自社の状況を整理するための「3分チェック」をご活用ください。

  • Q1. 本人の卒業証書に記載された「専攻」と、今の仕事に共通点はありますか?
  • Q2. 1日のうち、単純作業(清掃・運び出し等)は全体の2割以下に収まっていますか?
  • Q3. 日本人の同僚と同じ給与体系、同じ福利厚生を適用していますか?
  • Q4. 業務内容を説明するための「客観的な証拠(契約書・図面・計画書)」はありますか?

すべての質問に自信を持って「YES」と言えない場合でも、すぐに不許可になるわけではありません。大切なのは、「なぜその業務が必要なのか」という理由を言語化し、必要に応じて修正することです。

まずは社内のJ/D(職務記述書)の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。もし「説明が難しい」と感じる部分が見つかったら、そこが専門家に相談すべきポイントです。

まずは現在の業務フローを書き出し、本人の経歴と並べてみることから始めてみてください。

行政書士青嶋雄太
この記事を書いた人
行政書士 青嶋雄太

私は約10年間にわたり法律関連の仕事に従事してきました。司法書士事務所と行政書士事務所での経験を通じて、多くの案件に携わり、幅広い視点から問題を解決してきました。
私たちの事務所では、行政書士としての専門知識だけでなく、提携先の士業事務所と連携し、対応できない案件にも柔軟に対応しています。どんな問題でも、お気軽にご相談いただければ幸いです。

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