銀行口座の相続手続きの必要書類と流れ預金の引き出しは150万円まで?

相続手続き

相続手続きは、法律で決まっている一連の手続きが必要です。
まず、相続人が確定され、次に財産の調査が行われます。これらの手続きが完了した後、遺産分割協議が行われ、各相続人が財産を承継します。その後、各相続人は各機関で名義変更の手続きを行います。
名義変更が必要なものとしては、不動産の名義変更と預貯金の名義変更が一般的です。
今回は、特に金融機関での名義変更について詳しく説明します。金融機関での名義変更は、預貯金や証券などの金融資産を相続人が承継するために必要な手続きです。この手続きは、相続人が金融機関に相続の事実を通知し、必要な書類を提出しなくてはなりません。

金融機関の相続手続き

被相続人が預貨金を所有している場合、その口座の金融機関に対する手続きが必要となります。金融機関は預金者の死亡を確認すると口座を凍結しますが、ただ単に役所に死亡届を提出しただけでは口座が自動的に凍結されるわけではありません。相続人が金融機関に連絡し手続きを行うと、その時点で口座が凍結されます。この手続きは、電話連絡などで行うことができます。
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相続手続きの簡単な流れ

  1. 事前準備:まず、戸籍の収集や遺言書の有無の確認などの事前準備を行います。相続人全員で手続きするのが基本です。
  2. 金融機関に連絡する:まず、預貯金口座の名義人が亡くなったことを、銀行や信用金庫などの金融機関に連絡します。この連絡により、被相続人が名義人の口座は凍結されます。
  3. 残高証明書を発行してもらう:相続税の申告が必要な場合は、故人が亡くなった日時点での残高証明書を銀行に発行してもらう必要があります。
  4. 遺産分割協議を成立させる:遺言書がないときは、手続きをする前に相続人同士による話し合い(遺産分割協議)をして誰が預貯金を相続するのかを決める必要があります。
  5. 必要書類の提出:その後、所定の手続きを踏むことで故人名義の口座は解約され、相続人は預貯金の払戻しなどを受けることができるようになります。必要な書類は遺言書の有無や遺産分割協議の状況、手続きの内容などで異なります。
  6. 払い戻し等の手続きをする:金融機関に提出した書類に不備がなければ、預貯金の払戻しや口座の名義変更が行われます。

なお、遺産分割前の相続預金の払戻し制度を利用すれば、被相続人の銀行口座から一旦預金を引き出し、葬儀などの費用にあてることができます。

預金口座の詳細な手続きの流れ

預金口座の相続手続きについての手順について説明をします。
相続が始まると、まず被相続人が所有していた財産を調査します。自宅を探索すると、預金通帳が見つかることがあります。その通帳やカードに記載されている金融機関に行って手続きを行う前に、相続事務センターや通帳に記載のある支店に電話で連絡を取りましょう。
電話連絡を行うと、金融機関は口座を凍結します。口座から引き落としがある場合は、それらの契約の変更を事前に連絡しておく必要があります。
連絡をした後は、金融機関の指示に従って手続きを進めてください。その際に、相続開始日現在の残高証明書を一緒に請求しましょう。残高証明書の発行依頼を行うことで、金融機関は亡くなった方の口座の取引を全て調査し、財産漏れを防ぐことができます。
ゆうちょ銀行の場合、残高証明書の他にも貯金等照会書の提出が必要です。
残高証明までは相続人個人で行うことができますが、口座の承継についての手続きは、基本的に相続人全員で行う必要があります。

遺産の承継については、遺言書が存在する場合はそれを持参し、存在しない場合は全ての相続人が参加して遺産分割協議を行い、その結果に基づいて口座の解約または名義変更を行います。
相続の届出には、全ての相続人の実印の押印と署名、そして印鑑証明書の提出が必要です。
遺産分割協議を行う前に、金融機関に連絡を取り、遺産分割協議書に押印する際に一緒に押印を依頼することをお勧めします。
遺産分割協議書に実印の押印と印鑑証明書の添付がある場合、口座を承継する代表相続人だけの署名と押印で済むこともあります。ただし、金融機関によっては取り扱いが異なる場合があるため、事前に連絡を取り、確認を行ってください。
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預金口座の相続手続きに必要な書類

預金口座の相続手続きに必要な書類は以下の通りです。

遺言書がある場合

  • 金融機関の申請用紙
  • 遺言書
  • 検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)
  • 被相続人(亡くなられた方)の戸籍謄本または全部事項証明(死亡が確認できるもの)
  • その預金を相続される方 (遺言執行者がいる場合は遺言執行者)の印鑑証明書
  • 遺言執行者の選任審判書謄本(裁判所で遺言執行者が選任されている場合)
  • 解約する預貯金口座の通帳、キャッシュカード

遺産分割協議書がある場合

  • 遺産分割協議書(法定相続人全員の署名・捺印があるもの)
  • 被相続人(亡くなられた方)の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 解約する預貯金口座の通帳、キャッシュカード

遺産分割協議書がない場合

  • 被相続人(亡くなられた方)の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
  • 相続人全員の印鑑証明書

家庭裁判所による調停調書・審判書がある場合

  • 家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本(審判書上確定表示がない場合は、さらに審判確定証明書も必要)
  • その預金を相続される方の印鑑証明書

詳細は、お取引金融機関にお問い合わせください。
法定相続情報一覧図の写しを提出すれば、戸籍を提出しなくても良いですが、必要書類や処理完了までの期間は金融機関によりまちまちで、およそ2週間から1ヶ月ほどを要することがありますし、金融機関から別途、提出を求められる書類がある可能性もあります。

遺産分割前の相続預金の払戻し制度とは

遺産分割前の相続預金の払戻し制度とは、遺産分割が成立する前に預金を払い戻すことが可能な制度です。この制度は、2019年7月1日に新設されました。
身近な人が亡くなった際には、葬儀費用などの高額な出費が発生することがあります。
相続人がこれらの高額な費用を支払うことができない場合もあり、亡くなった方の預金を引き出すには、相続法改正までは、相続人で遺産分割協議を行い、どの相続人が預貯金を引き継ぐかを決定しなければならなかったため、時間がかかり、葬儀費用が支払えなかったり、亡くなった方の扶養を受けていた家族の生活が困難になるといった事態が発生していました。
そこで、相続法が改正され、遺産分割協議を経ずに預貯金を払い戻すことが可能になりました。これにより、葬儀費用の支払いや家族の生活費など、急を要する費用に対応することが可能となりました。

遺産分割前の相続預金の払戻し制度で引き出せる金額について

民法の改正により、相続人は遺産分割協議を行わずに、金融機関から一定の金額を引き出すことが可能になりました。これは家庭裁判所の介入を必要とせず、相続人一人の請求により行うことができます。ただし、引き出せる金額は全額ではなく、法務省令による限度額が設けられています。この限度額は、亡くなった方の扶養家族が生活できる程度の金額を基準に設定されています(現在の限度額は各金融機関ごとに150万円ですが、法令の変更により金額が変動する可能性があります)。
引き出せる金額の計算式は以下の通りです:
預貯金額(相続開始時点)× 3分の1 × 各法定相続分
この方法で預貯金の払い戻しを受けた場合、相続人は遺産の一部分割を行ったとみなされ、清算されます。

相続放棄との関連性

遺産分割前の相続預金の払戻し制度については、相続法改正により、遺産分割前に相続預貯金の払戻しができることになりました。この制度は、相続人の負担軽減や生活資金確保のメリットがある一方で、預貯金の使い方により相続放棄ができなくなるというデメリットもあります。
具体的には、遺産分割前でも、それぞれの相続人が、他の相続人の同意なしに、ひとりで相続預貯金の一部払戻しができる点にあります。ただし、払戻しを受けられる金額には一定の制限があります。
また、法律上の相続人に当たる人が、亡くなった被相続人の財産(不動産、預金など)を「処分」してしまったなど、一定の場合には、相続人となることを受け入れたと法律上扱われてしまい、期間内であっても相続放棄ができない場合があります。その結果、その人は被相続人のプラスの財産、マイナスの財産を全て受け継ぐことになってしまいます。
したがって、遺産分割前の相続預金の払戻し制度を利用する際には、そのメリットとデメリットを理解し、必要な書類を準備し、適切な手続きを行うことが重要です。

家庭裁判所を通じて預貯金を引き出す方法

相続人が単独で預貯金を引き出すことが可能である一方、亡くなった方の遺産を使いたい場合は、家庭裁判所の判断を経る必要があります。家庭裁判所では、遺産の仮分割等が認められていましたが、要件が厳しいためあまり利用されていませんでした。
しかし、改正された民法により、以下の要件を満たす場合には、家庭裁判所の判断により、預貯金の全部または一部を相続人に仮の取得を認めることが可能となりました。

  1. 遺産分割の調停・審判が家庭裁判所に申し立てられていること
  2. 相続人が、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により、遺産に属する預貯金を行使する必要があること
  3. 相続人が、上記2の事情による権利行使を申し立てたこと
  4. 他の相続人らの利益を害さないこと

家庭裁判所を通じて預貯金を引き出す際のメリットは、家庭裁判所を通す場合、仮払い可能とされる金額に上限額の制限がないことです。家庭裁判所を通じて預貯金を引き出す際のデメリットとしては、手間と時間がかかること、また、希望する金額が必ずしも認められるわけではないことが挙げられます。
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まとめ

相続手続きは、被相続人の戸籍と相続人の戸籍が必要となり、遺産分割協議書や金融機関の所定の書類に相続人全員の実印の押印と署名、印鑑証明書の添付が求められます。各金融機関によって手続きは異なるため、自身で手続きを行う際には事前に確認することをお勧めします。
また、身近な人が亡くなった後の銀行預金の払い戻し方法についても、民法の改正により、法務省令で決められた金額を引き出せるようになりました。これにより、急に必要となる葬儀代や当面の生活費を相続人が立て替える必要がなくなりました。
相続手続きは複雑であり、専門的な知識が必要となります。そのため、ご不明点や困ったことがございましたら、是非当事務所にご相談ください。下記の問い合わせフォームからお気軽にご連絡いただけます。私たちの専門家が、皆様の相続手続きをスムーズに進めるお手伝いをいたします。ご連絡をお待ちしております。

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プロフィール
この記事を書いた人
行政書士青嶋雄太

私は約10年間にわたり法律関連の仕事に従事してきました。司法書士事務所と行政書士事務所での経験を通じて、多くの案件に携わり、幅広い視点から問題を解決してきました。
私たちの事務所では、行政書士としての専門知識だけでなく、提携先の士業事務所と連携し、対応できない案件にも柔軟に対応しています。どんな問題でも、お気軽にご相談いただければ幸いです。

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