特定空家等の管理義務とは?空き家対策の基本を知ろう

空き家手続き

日本では、空き家の数が増加し続けています。空き家は、景観や安全性の低下、火災や犯罪の発生、地域の活力の喪失など、さまざまな社会的問題を引き起こしています。このような空き家問題に対処するために、国や自治体は「特定空家等に対する措置」を行っています。この制度の目的は、空き家の数を減らし、空き家の有効活用を促進し、空き家による社会的影響を軽減することです。
この記事では、特定空家等に対する措置の内容と手順、メリットと注意点について解説します。特定空家等に対する措置は、空き家の所有者や管理者にとって、義務だけでなく権利でもあります。空き家問題の解決に向けて、特定空家等に対する措置の制度を理解し、適切に活用することが重要です。

空き家問題の深刻さと影響を紹介

空き家問題は、日本を含む多くの国で深刻な社会問題となっています。空き家が放置されると、倒壊や崩壊、ごみの不法投棄、放火などによる火災発生など様々な悪影響が生じます。
空き家は、所有している自分たちだけの問題ではなく、近隣にも大きな影響を与えたり、空き家が周辺の不動産価格を下げることがあり、地域経済に悪影響を与えます。
空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律が令和5年12月13日より施行されました。
空き家を発生させたり放置したりしないためには、空き家を「売る」「貸す」「使う」「解体する」などの方針を決め、方針に合ったサービスなどを活用して実行に移すことが重要です。
以上のように、空き家問題は深刻で、その影響は広範であります。適切な対策を講じることで、これらの問題を緩和することが可能です。

特定空家等に対する措置の内容と手順

「特定空家等に対する措置」は、空き家が放置されることで起こり得る問題を解決し、建物自体の再利用や処分を目的とした法律です。具体的には以下のような目的があります。

  • 周囲に悪影響を及ぼす特定空家等の除却等の更なる促進
    特定空家等とは、保安上危険、衛生上有害、景観を損なう、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にある空家等を指します。これらの空家等の除却を促進することで、周囲に悪影響を及ぼす問題を解消します。
  • 空家等の有効活用や適切な管理の確保
    特定空家等の問題が発生する前の段階から、空家等の有効活用や適切な管理を確保することで、空き家対策を総合的に強化します。
  • 市町村による空家の解体など
    市町村は、特定空家等の解体やその他の対策を行うことができます。
  • 財政上の措置及び税制上の措置等
    市町村が行う空家等対策の円滑な実施のために、国及び地方公共団体による空家等に関する施策の実施に要する費用に対する補助、地方交付税制度の拡充を行います。

これらの措置は、空き家の数が増加を続け、更に増加が見込まれる中で、空き家対策の強化が急務となっている現状を踏まえたものです。これにより、空き家問題の解決と、今後の不動産市況にも寄与することが期待されています。
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特定空家等の定義と判断基準を紹介

「特定空家等」とは、日本の「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家法)において定義されています。この法律では、「特定空家等」を以下のように定義しています。

  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

これらの状態にあると認められる空家等が「特定空家等」とされます。

具体的な判断基準としては、以下のようなものがあります。

  • 外壁の変形・傾斜(目視で屋根の変形や建物の倒れが一見して分かる)
  • 倒壊など保安上の危険性の周囲への影響度合い(敷地境界までの距離)
  • 悪影響の度合い、危険等の切迫性の度合い、周辺状況

これらの基準を満たす場合に特定空家等と評価されます。ただし、具体的な判断は各地方公共団体により異なる場合がありますので、具体的な事例については該当する地方公共団体にご確認ください。

特定空家等に対する措置の種類と流れ

特定空家等に対する措置の種類と流れは以下の通りです。

  1. 空き家がある市町村から助言、指導、勧告を受ける
    まず、空き家の周辺の住人からの苦情や通報が必要です。
  2. 市町村から改善命令を受ける
    市町村からの勧告にも従わない場合、行政処分に値する「改善命令」が出されます。
  3. 行政代執行が行われる
    改善命令にも従わない場合、行政代執行が行われます。

特定空家等に対する措置は、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。これらの措置は、空き家の問題を解決し、地域社会の安全と生活環境の保全を図るために重要です。

行政がする特定空家等への対応

特定空家等への対応手段として、以下のような手続きがあります。

  • 助言・指導
    市町村長は、特定空家等の所有者に対し、除却、修繕、立木竹の伐採など必要な措置をとるよう、助言・指導を行います。これは行政指導で、所有者に何らかの義務が生じるわけではありません。
  • 勧告
    助言または指導を行っても特定空家等の状態が改善されない場合、市町村長は、相当の猶予期間を付けて、必要な措置をとるよう勧告することができます。
  • 命令
    勧告を受けた者が、正当な理由なく勧告された措置をとらなかった場合、特に必要があると認めるときは、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置を講じるよう命令することができます。

これらの措置は、「助言・指導」⇒「勧告」⇒「命令」の3段階のプロセスを経て、それでも改善されない場合は「代執行」という最終手段を採る仕組みになっています。
具体的な措置の内容は、特定空家等についての除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置を行うことを求めるものです。ただし、建築物等の全部の除却を助言・指導できるのは、「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態または著しく衛生上有害となるおそれのある状態」の特定空家等だけです。
以上の措置は、特定空家等の状態を改善し、周辺の生活環境を保全するために重要です。特定空家等の所有者は、これらの措置を適切に講じることが求められます。
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所有者等が行う除却、修繕、利活用などの具体的な措置例を紹介

以下にそれぞれの措置例を説明します。

  • 除却
    これは、古くなった設備や機器を取り除くことを指します。例えば、古いエアコンや冷蔵庫を新しいものに交換することが除却の一例です。
  • 修繕
    これは、壊れたり、劣化したりした設備や機器を修理または改善することを指します。例えば、壊れた窓ガラスを修理したり、壁のヒビを補修したりすることが修繕の一例です。
  • 利活用
    これは、資産をより効果的に使用するための措置を指します。例えば、空き部屋を賃貸に出すことや、余った土地に太陽光発電パネルを設置して電力を売ることが利活用の一例です。

空き家問題の解決に貢献するメリットを紹介

空き家問題の解決には多くのメリットがあります。以下にいくつかを挙げてみます。

  • 地域社会の活性化
    空き家を再利用することで、新たな住民やビジネスが地域に引き寄せられ、地域社会が活性化します。
  • 安全なコミュニティ
    放置された空き家はしばしば犯罪の温床となります。これらの家を適切に管理または利用することで、地域の安全性を向上させることができます。
  • 経済的な利益
    空き家をリノベーションやリースにより再利用することで、新たな経済的な機会を創出します。
  • 環境保護
    新たな建物を建設する代わりに既存の建物を再利用することで、自然資源の消費を抑え、環境負荷を軽減します。

これらは一部のメリットに過ぎませんが、空き家問題の解決は地域社会全体にとって有益です。それぞれの地域や状況により、具体的な解決策やアプローチは異なるかもしれませんが、その基本的な目標は同じです。
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固定資産税や財産管理などの注意点を紹介

  • 固定資産税の影響
    特定空家等に指定され、区から勧告を受け賦課期日(1月1日)までに勧告に対する必要な措置が講じられない家屋の敷地については、固定資産税・都市計画税の住宅用地に係る課税標準の特例(以下「住宅用地の特例」という)の適用対象から除外されます。これにより、固定資産税額はおおよそ更地状態と同等の最大6倍となる場合があります。

特定空家等の勧告や必要な措置等については、ご所有の土地・家屋が所在する区役所へ、住宅用地の特例や固定資産税等については、ご所有の土地・家屋が所在する都税事務所へお問い合わせください。
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まとめ

日本では、空き家の数が増加し、社会的な問題となっています。空き家は、火災や犯罪のリスクを高めるだけでなく、景観や地域の活性化にも悪影響を及ぼします。そこで、国や自治体は、特定空家等に対する措置という制度を導入しました。この制度は、空き家の所有者に対して、空き家の状況を調査し、必要に応じて除却や修繕、利活用などの措置を行うように求めるものです。特定空家等とは、空き家の中でも、危険性や悪影響が高いと判断されたものを指します。特定空家等に対する措置は、所有者の同意がなくても行われる場合がありますが、その場合は、所有者に対して費用の負担や補償などの措置がとられます。特定空家等に対する措置は、空き家問題の解決に向けて、有効な手段の一つです。空き家の所有者は、固定資産税や財産管理などの責任を果たすとともに、空き家の活用方法を検討する必要があります。空き家対策に関する支援メニューや関連情報は、国土交通省や自治体のホームページなどで確認できます。空き家問題は、私たち一人一人の関心と取り組みが必要な課題です。特定空家等に対する措置を理解し、空き家の適切な管理や活用を進めましょう。

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プロフィール
この記事を書いた人
行政書士青嶋雄太

私は約10年間にわたり法律関連の仕事に従事してきました。司法書士事務所と行政書士事務所での経験を通じて、多くの案件に携わり、幅広い視点から問題を解決してきました。
私たちの事務所では、行政書士としての専門知識だけでなく、提携先の士業事務所と連携し、対応できない案件にも柔軟に対応しています。どんな問題でも、お気軽にご相談いただければ幸いです。

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