養子は相続人になれる?養子縁組と相続権、特別養子縁組の影響とは

相続手続き

相続が発生した場合、法定相続人を特定することが必要となります。そのためには、被相続人(故人)の生涯にわたる全ての戸籍を取得することが求められます。これらの戸籍は、被相続人の本籍地を管轄する市区町村の役所から取得することができます。
ただし、全ての戸籍を一つの役所から取得できるケースは少ないです。多くの場合、被相続人が生涯にわたって転籍を行っているため、複数の役所から戸籍を取得する必要があります。これは、相続人を確定するための手続きの一部であり、注意が必要です。
戸籍を確認した際に養子に行った兄弟がいることがあります。
今回の記事では、養子縁組の制度についてや相続手続きで養子がいた場合の手続きについて解説したいと思います。

養子縁組とは

養子縁組は、養親と養子との間に法律上の親子関係を作り出す制度です。養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があります。
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普通養子縁組

普通養子縁組は、縁組後も実親子関係が存続する制度で、養親と養子との間に法律上の親子関係を作り出します。普通養子縁組で未成年者を養子とする場合には、家庭裁判所における許可等が必要となります。
普通養子縁組の要件は養親は20歳以上で、養親本人と養子本人の合意が必要です。養子が15歳未満の場合には、養子の法定代理人(親権者等)が、養子本人に代わって養子縁組の合意をする必要があり、養親又は養子に配偶者がいる場合には、原則として、その配偶者の同意が必要です。
養子縁組の効力は、市区町村の役所への届出によって生じます。
養親又は養子に配偶者がいる場合には、原則として、その配偶者の同意が必要です。

(養親となる者の年齢)
第七百九十二条 二十歳に達した者は、養子をすることができる。
(配偶者のある者が未成年者を養子とする縁組)
第七百九十五条 配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。ただし、配偶者の嫡出である子を養
子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。

民法 – e-Gov法令検索より引用

普通養子縁組の流れ

養子縁組の手続きは以下のように行います。

  1. 養子縁組届書の作成:養子縁組届書を作成します。各役場や支所などの窓口で入手することができます。また、各市町村のホームページからダウンロードして入手することもできます。
  2. 必要な書類の準備:以下の書類が必要です。
    養親及び養子となる人の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)。ただし、本籍地に届出を行う場合は必要ありません。本人確認書類(運転免許証、パスポート等)、家庭裁判所の許可書謄本(未成年者を養子にするとき、後見人が被後見人を養子にするとき)。
  3. 届出:必要な書類と一緒に養親または養子の本籍地か住所地の役場に提出します。
    なお、養子になる人が未成年の場合は、あらかじめ家庭裁判所の許可の審判を受けてください。また、養子になる人が15歳未満のときは、その法定代理人が署名してください。

以上が一般的な手続きの流れとなりますが、具体的な手続きや必要な書類は地域や個々の状況により異なる場合がありますので、詳細は各区役所市民課、支所区民生活課市民係にお尋ねください。また、特別なケース(例えば、外国籍の人との養子縁組を行う場合など)については、別途手続きが必要となる場合があります。
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特別養子縁組

特別養子縁組は、縁組により実親子関係が終了する制度で、こどもの利益のために特に必要がある場合に限り、家庭裁判所の手続により成立します。
特別養子縁組は、養子と法律上の親子関係となるため、養子は実親との縁がなくなり相続を受けることができません。また、特別養子縁組の手続きは、家庭裁判所の審判により行われ、最低6ヵ月以上の監護期間が必要となります。

(特別養子縁組の成立)
第八百十七条の二 家庭裁判所は、次条から第八百十七条の七までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族と
の親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。
2 前項に規定する請求をするには、第七百九十四条又は第七百九十八条の許可を得ることを要しない。
(実方との親族関係の終了)
第八百十七条の九 養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了する。ただし、第八百十七条の三第二項た
だし書に規定する他の一方及びその血族との親族関係については、この限りでない。
(監護の状況)
第八百十七条の八 特別養子縁組を成立させるには、養親となる者が養子となる者を六箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければなら
ない。
2 前項の期間は、第八百十七条の二に規定する請求の時から起算する。ただし、その請求前の監護の状況が明らかであるときは、この限
りでない。

民法 – e-Gov法令検索より引用

養子は相続人になれるのか

養子になった子供が相続人になるかどうか、という問いについて考えてみましょう。
一般的に誤解されていることの一つが、「養子になった子供は相続人にならない」という考え方です。戸籍をたどると、相続人の中に養子に出された人がいることがあります。しかし、多くの人は養子になった人は実親の相続権がないと思い込んでいます。
しかし、事実は異なります。養子に出されたとしても、実親の相続権は失われず、相続人となります(普通養子縁組の場合)。そのため、遺産分割協議書を作成する際には、養子になった人も相続人として協議に参加する必要があります。
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養子の相続分について

養子と実子の相続分に違いはありません。法律上、養子縁組が成立すれば、養子は実子と同じく、法定相続人として扱われます。例えば、亡くなった方の配偶者のほかに2人の子が相続人である場合、1人が養子であったとしても子の相続分は等しく、法定相続分は民法の規定どおり、配偶者が2分の1、残りの2分の1を同じ割合で実子と養子で分けて4分の1ずつとなります。ただし、特別養子縁組の場合は、実親との法的な親子関係は消滅するため、実親が死亡した時の相続権を失います。また、相続税法においては、実子がいる場合は1人まで、実子が居ない場合は2人まで法定相続人とすることが可能です。これはあくまで相続税法の税金を計算する時の法定相続人として含まれる人数の話で、1人、または2人までしか養子を迎え入れられないわけではありません。一方、実子であれば何人いても法定相続人として認めてもらうことが可能です。

まとめ

相続手続きは、まず相続人を確定し、財産調査を行う必要があります。被相続人の戸籍を全て収集し、誰が権利を持っているのかを確認します。遺言の有無を調べ、相続人全員で遺産分割協議を行い、各種届出を行います。相続税の申告が必要な場合は、その手続きも行います。
養子縁組については、法律上の親子関係を結ぶ手続きで、養子縁組をした日から養子は養親の法定相続人となり、実子と同じく財産を相続する権利を持ちます。
遺産分割協議書の作成などを行政書士に依頼すると、戸籍の収集も一緒に行ってもらえます。しかし、自分で手続きをする場合、相続人を確定するのは難しいことがあります。そのため、ご自身でお手続きをして難しい場合は、専門家に相談することをお勧めします。

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プロフィール
この記事を書いた人
行政書士青嶋雄太

私は約10年間にわたり法律関連の仕事に従事してきました。司法書士事務所と行政書士事務所での経験を通じて、多くの案件に携わり、幅広い視点から問題を解決してきました。
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