農地や山林は、日本の自然資源として大切な財産です。しかし、相続する際には、一般的な不動産とは異なる特別なルールや手続きがあります。そのため、相続人や遺族は、農地・山林の承継に関する知識や情報が不足していることが多く、困惑やトラブルに巻き込まれることもあります。
この記事では農地や山林を相続した場合の手続きについて解説したいと思います。
山林相続の基礎知識!農地・山林とは何か?
農地は、耕作の目的で供される土地をいいます。農地法により、農地はさまざまな目的で国から保護されています。
一方、山林は、森林法や都市計画法などの各種制限にもとづいた利用が前提とされています。
地目が「山林」の土地であっても、現況が「農地」であれば農地転用が必要です。逆に、地目が「農地」の土地を他の用途で使用する場合も、農地転用の手続きが必要です。
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農地どうかの判断
農地かどうかは、土地の利用方法を表す登記簿上の区分(地目)を確認することも大切ですが、農地かどうか判断する基準は、土地の現況を確認する必要があります。
登記簿上の地目とは無関係で、現況(今現在の利用方法)によって判断されます。
- 地目が「山林」でも現況が「農地」の場合、農地転用の手続きが必要です。農地法における農地とは、耕作の目的に供される土地をいい、登記簿上の地目とは無関係で、現況(今現在の利用方法)によって判断されます。たとえば、地目が山林となっている場合でも、現在は農地として使用しているのであれば、地目変更の対象となります。
- 逆に、地目が「農地」で現況が「山林」の場合も、農地転用の手続きが必要です。農地から他の地目へ変更するときの注意点は、難易度が高くなることです。安定した農産物の生産など、農地はさまざまな目的で国から保護されています。耕作を推奨しているエリアでは、農地から山林や宅地へ変更することは難しくなります。
以上のように、土地が農地か山林かを判断する際には、その土地の現況を考慮することが重要です。また、地目の変更には手続きが必要であり、適切な手続きを行わないと罰則が科せられることもありますので、注意が必要です。
法務局での相続登記の流れ
相続登記は、相続財産である不動産の所在地を管轄する法務局に、申請書及び必要書類を提出して行います。具体的な流れは以下の通りです。
- 相続する不動産を確認する
- 遺言または遺産分割協議で引き継ぐ人を決める
- 相続登記に必要な書類を収集、作成する
- 管轄の法務局へ申請する
農地を相続した場合
農地を相続した場合、農業委員会への届出が義務付けられています。以下にその手続きについて詳しく説明します。
農業委員会への届出が必要な理由農地を相続した相続人は、その事実を農業委員会に届け出なければなりません。これは、農地を適切に利用し国土の保全を図るため、売買などが行われる際には農業委員会の許可が必要とされているからです。
届出期限農地を相続した場合、その相続人は農地を取得したことを知った日から10か月以内に農業委員会に届け出なければなりません。期限を過ぎて届出がされていない場合は、10万円以下の過料が科せられることがあります。
届出の流れと必要書類農地を相続し、届出を行った際の主な流れは次の通りです。
- 届出者が届出書と必要書類を農業委員会事務局に提出する
- 農業委員会事務局で届出内容を確認
- 届出内容に不備がない場合は受理通知書を発行
- 届出者が受理通知書を受領
農業委員会への届出に必要となる主なものは以下の通りです。
- 農地法第3条の3の規定による届出書
- 印鑑
- 委任状(代理人が届出を行う場合)
- 相続したことの確認ができる書面(相続登記が終わっているときは、相続登記が終わって相続人が所有者となっている登記簿謄本を添付します)
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山林を相続した場合
山林を相続した場合、以下の3つの手続きが必要となります。
所有者の届出
山林を相続した方は市町村長に所有者の届出をする必要があります。届出をしなかった場合は法律上10万円以下の罰金と定められておりますので、手続きをしないと罰金を科されてしまう可能性があります。
森林組合への報告
山林の最寄りの森林組合に山林を売りたい、管理を任せたいといった意思表示をして所定の手続きをします。
相続登記
山林の名義変更手続きをすることです。山林を相続したら法務局で相続登記を行いましょう。
森林組合とは
森林組合は、森林の所有者が、森林の保全や林業に関わる事業を共同で行うために設ける団体で、協同組合の一種です。日本では森林組合法に基づいて設置されます。
日本の森林組合には、大体市町村に相当する範囲の民有林を対象にした狭義の森林組合と、狭い地区の共有地を共同経営する生産森林組合の2種があります。
森林組合は、森林を所有する組合員の出資により運営され、組合員に対して森林経営に関する相談に応じ、森林施業の受託、森林施業計画、資材の共同購入、林産物の販売、資金融資、森林災害共済などの事業を行っています。
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農地・山林の評価方法
農地の評価農地は、農地法で決められている「純農地」「中間農地」「市街地周辺農地」「市街地農地」の4種類に区分されます。
純農地と中間農地
その農地の固定資産税×国税局長が定める一定の倍率という計算式で評価をします。
市街地周辺農地
その農地が「市街地農地」である場合の価額×80%です。
市街地農地
その農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額からその農地を宅地に転用する場合にかかる通常必要と認められる1㎡当たりの造成費に相当する金額を控除した金額に、その農地の地積を乗じて計算した金額により評価されます。
山林の評価山林の評価方法は、所有している山林の種類によって異なります。山林は「純山林」「中間山林」「市街地山林」の3種類に分けられています。
純山林と中間山林
その山林の固定資産税評価額×国税局長が定める一定の倍率という計算式で評価をします。
市街地山林
その山林が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額からその山林を宅地に転用する場合にかかる通常必要と認められる1㎡当たりの造成費に相当する金額を控除した金額に、その山林の地積を乗じて計算した金額により評価する。
納税猶予制度については、新型コロナ感染拡大のような、予測できない失業などにより大幅に所得が減少した場合に、納税が猶予されるほか延滞金が加算されなくなるという制度があります。この制度を上手に活用すれば、世代を超えた長期的な効果が見込めます。
以上の情報は一般的なものであり、具体的な評価額や納税猶予の適用については、個々の状況により異なるため、税理士など専門家に相談することをお勧めします。
まとめ
農地や山林の相続には、一般的な相続による不動産名義変更とは異なる手続きが必要です。
手続としては、法務局への登記だけでなく、別途届出が必要となります。
農地や山林の相続手続きはあまり一般的ではありませんが、提出を忘れると罰則が科せられる可能性があるため、注意が必要です。
ご依頼をご検討の方で、農地や山林の相続に関するご相談やお見積りが必要な場合は、お気軽にお問い合わせください。当事務所の行政書士が、親切丁寧に対応いたします。お問い合わせは、下記のフォームからお願いします。
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