「この業務、任せて大丈夫?」外国人雇用の在留資格チェックと判断の境界線

在留資格ビザ(VISA)

「優秀な外国人人材からの応募があった。しかし、自社が想定している業務で本当に就労可能なのだろうか?」

初めての外国人雇用や、これまでと異なる職種での採用において、多くの人事労務担当者がこの壁に直面します。在留カードの表面を確認するだけでは、「自社の業務内容」と「在留資格が認める活動」が合致しているかの判断はつきません。

万が一、在留資格の範囲を超えた業務を行わせた場合、企業側が「不法就労助長罪」に問われるリスクもあります。本記事では、採用フローにおいて確認すべき在留資格のチェック手順と、実務において「自社で判断できる部分」と「迷いやすいグレーゾーン」の境界線を整理します。

外国人雇用で直面する「この業務で働けるか?」という迷い

外国人採用の実務において、担当者を最も悩ませるのは「制度の文言」と「現場のリアリティ」の乖離です。まずは、なぜ在留カードの確認だけでは不十分なのか、その背景にあるリスクと実務上の難しさを整理します。

在留カードの確認だけで終わらない「業務適合性」の壁

在留資格のチェックは、在留カードが「偽造ではないか」「期限が切れていないか」といった形式的な確認だけでは不十分です。実務で最も重要かつ難しいのは、「自社が任せたい具体的な業務が、その在留資格で許可されている範囲内か」を照合することです。

在留カードに「就労制限なし」とあれば判断は比較的スムーズですが、多くの就労資格には「活動の制限」があります。任せたい仕事が資格の定義から外れていないか、業務の「中身」を精査する視点が求められます。
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不法就労助長罪のリスクと企業に求められる確認義務

企業側が「制度をよく知らなかった」としても、資格外の労働をさせた場合には「不法就労助長罪」(不法就労をさせた雇用主に対して科される罰則)に問われる可能性があります。

また、企業側が十分な確認を行わずに就労させた場合、過失であっても処罰対象となる可能性があるとされているため、採用時の確認プロセスは重要です。リスクを回避するためには、単なる書類の受け取りに留まらず、制度上のルールと自社の実務を照らし合わせるプロセスが欠かせません。

基本のチェック手順:採用フローにおける確認のセオリー

複雑な判断に入る前に、まずはどの企業でも共通して行うべき「一次チェック」の型を確立しましょう。ここでは、在留カードから読み取れる客観的な事実の確認方法について解説します。

就労制限の有無と在留期限のステータス確認

まずは、自社で確実に実行できる事実確認を行いましょう。在留カード表面の「就労制限の有無」欄を確認し、以下のどの区分に該当するかを把握します。

区分概要主な在留資格の例
就労制限なしどのような職種でも就労可能永住者、日本人の配偶者等
在留資格ごとに許可された活動のみ可能在留資格で定められた業務範囲に限り就労可能技術・人文知識・国際業務、特定技能 など
指定書により個別に活動が指定される場合あり個別の活動内容や勤務先が指定されることがある特定活動 など
在留資格に基づく就労活動のみ可許可された専門分野のみ可能技術・人文知識・国際業務など
就労不可原則として働くことができない留学生、家族滞在など(※別途許可が必要)

併せて、在留期限が切れていないか、更新申請中ではないかも必ず確認します。
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「資格外活動許可」の確認と就労時間の上限

留学生や「家族滞在」の資格を持つ人がアルバイトとして働く場合、「資格外活動許可」(本来の資格以外の活動で報酬を得る許可)が必要です。

在留カード裏面の「資格外活動許可」欄を確認し、許可の有無や条件が記載されているかを確認してください。留学生の場合は通常「原則週28時間以内」といった条件が付されます。この「週28時間」というルールは、他社との掛け持ち分も合算して計算するのが通説です。自社での勤務時間だけでなく、他社での就労状況もヒアリングしておくことが実務上のリスク管理となります。

「自社の業務」と「在留資格」は一致しているか?判断の分かれ目

形式的なチェックを終えたら、次は「自社の業務内容」とのマッチングを確認します。ここが最も判断の分かれ目になりやすく、実務担当者が頭を抱えるポイントです。

現場作業か、専門的・技術的分野か(業務の切り分け)

実務で最も迷いやすいのが、「現場での実務(単純労働とみなされやすい業務)」と「専門的・技術的業務」の境界線です。

たとえば、「技術・人文知識・国際業務」という資格は、エンジニアや通訳、マーケティングといった専門性が求められます。一方で、工場でのライン作業や飲食店のホール接客などは、原則としてこの資格では認められにくい傾向にあります。自社の業務が「どちらの性質が強いのか」を客観的に整理することが、判断の第一歩となります。
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複数の業務を兼任する場合の考え方

「メインは通訳だが、手が空いた時間は工場のラインに入ってほしい」といったケースは、中小企業の実務でよく見られます。

制度上、在留資格の範囲外の業務を行うことは慎重に判断すべき事項です。一般的には、許可された業務に「付随する形」での一時的な他業務であれば許容される余地があるとされますが、その頻度や割合が大きくなると「資格外活動」とみなされる懸念が生じます。

実務で迷いやすい「グレーゾーン」と例外ケース

基本ルールを理解していても、日本特有の雇用慣行や、キャリアのステップアップに伴う変更時には、判断が難しい「グレーゾーン」が発生します。ここでは代表的な2つのケースを紹介します。
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総合職採用や、将来的なキャリアパスを前提とした配置

日本の新卒採用で一般的な「入社後1年間は現場研修、その後に本社配属」というジョブローテーションは、在留資格との相性があまり良くありません。

研修として認められる期間や内容、その妥当性については、入管当局の審査において個別具体的に判断されます。あまりに長い現場研修期間は、「専門的業務を行うための資格」の趣旨に反すると判断されるリスクがあるため、実務上は非常に判断が難しい領域といえます。

留学生のアルバイトから「正社員」への切り替え

アルバイトとして働いていた留学生を、卒業後に正社員として採用する場合も注意が必要です。

アルバイト時代は「資格外活動許可」により業務内容を問わず働けましたが、正社員へ切り替える際は、「大学等での専攻内容」と「入社後の業務内容」の関連性が厳しく問われます。本人の能力が高くても、専攻と業務に関連性がないと判断されれば、変更許可が下りないケースも少なくありません。

自社で判断できること・判断が難しいことの整理

ここまで見てきた通り、外国人雇用には「定型的な作業」と「高度な評価」の2つの側面があります。これらを混同せず、自社でどこまでを担うべきかを整理しましょう。

自社で完結できる「事実の確認」

一方で、以下の「評価・予測」に関わる部分は、専門家(行政書士や弁護士等)への相談を検討すべき領域です。

  • 自社の業務内容が、どの在留資格の定義に該当するか
  • 本人の専攻や経歴で、その資格の許可が下りる見込みがあるか
  • 過去の審査傾向や最新の法改正に基づいた、グレーゾーンの解釈
  • 特殊なキャリアパス(現場研修等)の妥当性の立証

専門的な見解が必要となる「適合性の評価」

一方で、以下の「評価・予測」に関わる部分は、専門家(行政書士や弁護士等)への相談を検討すべき領域です。

  • 自社の業務内容が、どの在留資格の定義に該当するか
  • 本人の専攻や経歴で、その資格の許可が下りる見込みがあるか
  • 過去の審査傾向や最新の法改正に基づいた、グレーゾーンの解釈
  • 特殊なキャリアパス(現場研修等)の妥当性の立証

最終判断の前に、まずは「状況の整理」から

外国人採用を成功させるためには、性急に「できる・できない」の答えを出すのではなく、まずは現状の情報を整理し、不透明な部分を可視化することが重要です。

結論を急がず、業務内容と経歴を可視化する

「この人を採用できるか」の結論を急ぐ前に、まずは自社が任せたい業務の詳細を言語化し、候補者の経歴と並べて可視化することから始めてみてください。これらが整理されているほど、後の審査や専門家への相談がスムーズになります。

迷ったときは外部の視点を入れてリスクを減らす

在留資格の判断は、同じ職種であっても企業の規模や本人の専攻によって結果が変わることもある、個別性の高いテーマです。

少しでも「判断に迷う」と感じる部分があれば、社内だけで完結させようとせず、外部の専門的な知見を借りて状況を整理することをお勧めします。それが、企業としてのコンプライアンスを守り、安心して新しい仲間を迎えるための確実なステップとなります。

まずは、自社の現在の採用計画と、候補者の在留ステータスを突き合わせる作業から着手してみてはいかがでしょうか。

行政書士青嶋雄太
この記事を書いた人
行政書士 青嶋雄太

私は約10年間にわたり法律関連の仕事に従事してきました。司法書士事務所と行政書士事務所での経験を通じて、多くの案件に携わり、幅広い視点から問題を解決してきました。
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