NPO法人(特定非営利活動法人)や株式会社の定款には、活動内容の目的や会社の目的などが記載されています。
株式会社の場合は、会社の目的外の事を行うと契約などが無効になってしまうこともありますので、定款でどのように目的を記載するかは重要です。
今回の記事では、NPO法人を設立するときの目的の書き方や定款変更の手続き変更登記について解説します。
NPO法人とは
NPO法人について詳しく説明します。
NPO法人の定義とその役割
NPO法人は、Non-Profit Organization(非営利団体)の略称であり、営利を目的としない社会的な活動を行う組織です。特定非営利活動促進法は、特定非営利活動を行う団体に法人格を付与すること等により、ボランティア活動をはじめとする市民の自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進することを目的としています。特定非営利活動とは、20種類の分野に該当する活動であり、不特定かつ多数のものの利益に寄与することを目的とするものです。
NPO法人が果たす社会的な役割
NPO法人は、社会の様々な課題を発見し、課題解決の新たな手法の開発や政策提言、仕組みづくりなど、その解決に向けて取り組む活動を行っています。これらの活動により、地域全体の課題解決力を向上させ、市民が主体となった地域社会の形成に重要な役割を担うことが期待されています。NPO法人は政府や企業と協力し、社会的課題の解決に取り組みます。政府が手が回らない地域のニーズを補完し、社会的弱者への支援を行うことで、社会全体の安定と発展に寄与します。また、企業とのパートナーシップを通じて、社会的責任を果たす企業の取り組みを支援し、社会への共感を高めます。
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NPO法人設立の手続き
NPO法人を設立する目的は、特定の社会的課題に対処するための非営利活動を行うことです。NPO法人は、特定非営利活動を行うことを主たる目的とし、その活動が社会全体の利益につながることが求められます。具体的には、保健、医療、福祉、社会教育、まちづくり、観光、農山漁村の振興、学術、文化、芸術、スポーツの振興、環境保全、災害救援、地域安全活動など、20種類の分野が指定されています。
NPO法人の目的文は、その団体がどのような活動を行い、どのような社会的な意義があるのかを具体的かつ明確に第三者が見てわかるように記載することが重要です。目的文は、現在社会的に問題になっていて、その法人を作る動機・きっかけになったこと、誰に対してサービスを提供するのか(受益対象者の範囲)、どのような事業・活動を行うのか(主要な事業内容)を記載します。
- 受益者の範囲
- 主要な事業(特定非営利活動の分野)
- 事業活動が社会にもたらす影響や目標
この目的は、NPO法人が行う活動の詳細を示します。内容は自由ですが、誰が受益者で、どのような活動を行い、どのように社会に貢献するのかを第三者が理解できるように記述します。NPO法人の目的は公開されるため、活動がどのような社会的意義を持つのかを具体的かつ明確に、専門用語を避けて記述することが大切です。
(原則)
特定非営利活動促進法 | e-Gov法令検索より引用
第三条 特定非営利活動法人は、特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として、その事業を行ってはならない。
2 特定非営利活動法人は、これを特定の政党のために利用してはならない。
NPO法人設立準備
NPO法人を設立するためには、以下の手続きが必要です。
定款の作成
法人の目的、名称、特定非営利活動の種類などを記したもの。
都道府県、市区町村(所轄庁)での認証手続き
法律に定められた書類を全て添付した申請書を、所轄庁に提出します。
縦覧から審査、認証完了
所轄庁に受理されると2ヶ月間、一般の人に縦覧されます。縦覧が終わると所轄庁による審査が行われ、所轄庁に書類を受理されてから原則として2ヶ月以上4ヶ月以内に認証又は不認証が決定されます。
法務局でNPO法人の設立登記手続き
認証がされたら、申請者が登記します。登記には設立登記申請書、印鑑届書、認証書の写し、定款の写し、役員の就任承諾書及び宣誓書の写し、設立当初の財産目録の写しなどが必要です。
所轄庁へ設立登記完了届出書等を提出
登記が完了した後は完了後の登記事項証明書を取得し、それを所轄庁へ提出します。
NPO法人が行ってはいけない活動はあるか
NPO法人は、特定の個人や法人、団体の利益を目的とした事業を行ってはなりません。認証手続きでは、公益性が確認され、特定の個人の利益を目的とする活動や、構成員間の利益を主目的とする活動は認められません。また、受益者を会員に限定したり、地域を特定したりする場合も、不特定多数の利益に反する可能性があります。
(定義)
特定非営利活動促進法 | e-Gov法令検索より引用
第二条 この法律において「特定非営利活動」とは、別表に掲げる活動に該当する活動であって、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするものをいう。
2 この法律において「特定非営利活動法人」とは、特定非営利活動を行うことを主たる目的とし、次の各号のいずれにも該当する団体であって、この法律の定めるところにより設立された法人をいう。
一 次のいずれにも該当する団体であって、営利を目的としないものであること。
イ 社員の資格の得喪に関して、不当な条件を付さないこと。
ロ 役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の三分の一以下であること。
二 その行う活動が次のいずれにも該当する団体であること。
イ 宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とするものでないこと。
ロ 政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを主たる目的とするものでないこと。
ハ 特定の公職(公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第三条に規定する公職をいう。以下同じ。)の候補者(当該候補者になろうとする者を含む。以下同じ。)若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対することを目的とするものでないこと。
3 この法律において「認定特定非営利活動法人」とは、第四十四条第一項の認定を受けた特定非営利活動法人をいう。
4 この法律において「特例認定特定非営利活動法人」とは、第五十八条第一項の特例認定を受けた特定非営利活動法人をいう。
定款の目的外の行為の制限
株式会社などの法人と同じでNPO法人も定款で定められている目的の範囲内において、権利を有し義務を負いますので、NPO法人も定款の目的を超えた行為を行う事はできません。
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定款の作成とその重要性
NPO法人の定款は、法人の目的、組織、業務執行などについて、基本的な規則を記した書面です。定款は、法人の目的・活動・事業を定めていることから、法人の活動は、定款に記載している目的の範囲において権利を有し、義務を負います。NPO法人では、株式会社などの営利法人と異なり、認証申請で提出した定款など一定の書類は、一般に公開されることになりますので、不特定多数の第三者がどんな法人か確認をすることができます。そのため、NPO法人では、定款が他の法人よりも重要なのです。
NPO法人を設立する際に、各所轄庁の手引書などで記載されている記載例を参考にして定款を作成します。各都道府県の条例などで、書式が定められているときは、規定どうりの書式で作成する必要があります。NPO法人の定款は設立後の手続きでとても重要で法律で別の規定がある場合を除き、基本的に定款の記載通りに手続きを行う必要があります。そのため、役員や活動目的、運営方法について細かく記載してどういった組織にするのか考えて作成しなくてはなりません。
定款には必ず記載しなくてはならない絶対的記載事項、記載しなくてはならない事項や定款に記載することによって法が定める要件を変更することができる事項である相対的記載事項、団体の運営にとって必要な規定を法令に違反しない限り、自由に書き込むことができる任意的記載事項があります。具体的な記載事項の詳細は、各所轄庁の手引書や専門家の助けを借りて確認することをお勧めします。定款の作成はNPO法人設立において、最大の山場と言えます。定款の作成が適切に行われることで、NPO法人の運営が円滑に進むことが期待できます。
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目的を変更したい場合
NPO法人が定款を変更する必要性は、その活動や運営の状況によります。例えば、活動地域を変更したい、新しい事業を始めたい、法人名を変更したい、事務所を移転したい、役員の人数や目的を変えたいなどの場合に定款の変更が必要となります。
目的は定款の必要的記載事項のため、定款に記載しないと定款自体が無効となります。
定款の変更するときには、変更事項について社員総会で議決しなくてはならず、その議決は定款に別段の定めがある場合を除き、社員総数の2分の1以上が出席し、その出席者の4分の3以上の多数でもってされる必要があります。
NPO 法人は、目的を変更する際には定款変更認証申請をする必要があります。
定款変更認証申請とは、設立の時と同じように、所轄庁に申請をして、提出した書類の一部は、受理した日から2週間、公衆の縦覧に供されます。縦覧期間の終了後2カ月以内に、所轄庁が認証又は不認証の決定を行います。
認証がされないと定款の変更の効力が発生しないため注意が必要です。
法務局での手続き
NPO法人の目的は登記事項のため、所轄庁で目的変更の定款認証申請が完了して認証書が届いた日から2週間以内に法務局で登記をしなくてはなりません。
一般的な、目的変更の登記申請の際に添付する書類は、社員総会議事録、認証書、定款となります。
登記が完了した後は完了後の登記事項証明書を取得するようにしてください。
定款の変更の登記完了提出書
認証を受けた後遅滞なく、変更後の定款を所轄庁へ提出をします。
所轄庁によって提出する書類は異なりますが、変更後の定款、社員総会議事録、法人の登記事項証明書などを添付することが多いです。
まとめ
NPO法人は、定款などの書類を所轄庁で認証し、その後登記して設立します。認証申請時には、定款を含むさまざまな書類が公開されるため、自社の活動内容を第三者が理解できるように記述することが重要です。そのため、活動内容を具体的に、専門用語を避けて記述することをお勧めします。これにより、NPO法人がどのような活動を行い、それがどのように社会に貢献するのかを明確に伝えることができます。NPO法人は手続きがとても煩雑ですので、ご自身でお手続きができないようであれば、当事務所にご相談いただければ幸いです。
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