特定空家等の管理と行政代執行について市区町村長は、特定空家等の所有者に対して、その空家の除却、修繕、立木竹の伐採など、周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置を講じるよう求めることができます。この判断は、ガイドラインや市区町村長が定める基準に基づき、所有者等の調査や立入調査を経て行われます。
特定空家等に対する手続きには、助言や指導、勧告、命令、そして代執行の4つがあります。本記事では、行政代執行を中心に、空き家の解体方法や所有権の放棄可能性について解説します。
行政代執行とは
行政代執行とは、建築物等の所有者が適切な管理を行わない場合に、行政が代わりに空き家を除去する措置のことを指します。しかし、市区町村にも予算や人的資源の限界があり、基本的には相続人や建築物等の所有者が空き家を処分することが求められます。
所有者が適切な管理を行わない場合、建築物等の所有者が空き家を適切に管理できない場合、自治体は直接その空き家を管理することができません。そのため、空家特措法による措置が行われます。
行政代執行の範囲と要件行政代執行は、特定空家等の所有者に代わり行政が強制的に措置をすることを指します。ただし、全ての空き家に行政代執行が適用されるわけではありません。代執行できる措置は以下の2つの要件を満たす必要があります。
- 他人が代わってすることのできる義務(代替的作為義務)に限られること
- 当該特定空家等による周辺の生活環境等の保全を図るという規制目的を達成するために必要かつ合理的な範囲内のものとしなければならないこと、代執行前の手続き代執行を行う前には、相当の履行期限を定め、その期限までに義務の履行がなされないときは、代執行を行う旨を予め文書で通告しなければなりません。
行政代執行の費用負担行政が代わりに行政代執行を行った場合、最終的にはその費用は所有者等から徴収されます。しかし、その徴収する費用は、実際に要した費用に限られます。これには作業員の賃金、請負人への報酬、資材費、第三者への保証料等が含まれます。
空き家の適切な管理と解体の選択
空き家の所有者は、その管理に責任を持つ必要があります。自己所有の物件が何らかの事情で空き家になったり、相続した実家が管理不足で空き家になるなど、様々な状況が考えられます。しかし、所有者は、周囲の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、適切な管理を行うべきです。
老朽化した空き家を活用できれば最良ですが、それが困難な場合もあります。売却を希望しても買い手が見つからない場合や、適切な管理ができない場合、解体を選択することもあります。ただし、解体は無料ではないため、その費用を捻出する必要があります。
解体費用がない場合の対策
空き家が特定空家等と認定された場合、行政代執行を受ける可能性があります。また、固定資産税等の住宅用用地特例の対象から除外され、税制上の優遇が受けられなくなることもあります。さらに、強風などで空き家が損壊し、通行人に怪我をさせた場合、損害賠償を求められる可能性もあります。
これらのリスクを理解し、建物を処分したいと考えても、買い手が見つからないことや、安全面から解体を希望しても費用が出せないことがあります。そのような場合、全国各地の金融機関が空き家対策の推進や、解体やリフォーム費用の貸付を行っています。また、自治体によっては、空き家の解体に補助金制度を設けている場合もありますので活用しましょう。
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抵当権が設定されている場合の対策
空き家に抵当権が設定されている場合、その抵当権を抹消するための登記手続きが必要です。この手続きには、抵当権を設定した者の協力が必要となります。住宅ローンで金融機関が抵当権を設定している場合、完済していても抵当権抹消書類がなければ、金融機関に連絡して書類を用意する必要があります。
空き家の所有権放棄の可能性
空き家を所有しているが、資産価値が見込めず、買主や借主が見つからない場合、管理費用や処分費用がかさむため、所有権を放棄したいと考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、所有権の放棄は一筋縄ではいかないと言えます。民法では、所有権の放棄は相手がいない単独行為とされています。しかし、不動産の所有権については、所有者のない不動産は国庫に帰属するとされています。具体的な規定はなく、所有権放棄が可能なのかは不明瞭です。裁判の判例ではないものの、所有権放棄の登記手続きに関する先例があり、その先例では所有権の放棄ができないとされました。この先例は、所有者の崖地が崩壊寸前で危険な状態で所有権を放棄し、国に帰属させ、国の資力によって危険防止を図ることが目的と考えられている例です。他の案件も同様かは不明ですが、理由が明確でありません。それに、不動産登記は基本的に単独で行うことができないため、国が認めない限り共同申請として登記手続きを行うのは難しいと考えられます。資産価値の高いものを放棄したいということは何らかの理由があると考えられますので、その危険を国に移転させるのは厳しいと考えられます。
第二百三十九条 所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
民法 – e-Gov法令検索より引用
2 所有者のない不動産は、国庫に帰属する。
まとめ
空家特措法の制定により、修繕や立木竹の伐採等の措置を講じることで、適正管理できていない特定空家の問題を解決できるようになりました。しかし、全ての空き家を行政代執行することはできず、市区町村の予算や人員にも限界があります。したがって、所有者への助言や援助など、様々な対策を講じる必要があります。空き家を解体することも選択肢の一つですが、解体には費用が発生します。現金がなければ、金融機関でローンを組むなどの方法があります。相続の場合には、現金等を相続することもあるので、その場合には相続財産で費用を捻出するのも一つの方法です。空き家に抵当権が付いている場合には、抵当権設定者の協力が必要となります。ローン等を完済しているかどうかなど、確認して手続きを進めるようにしてください。不動産は動産と違い、放棄するにも、登記など様々な手続きが必要です。空き家などを所有している場合に所有権を放棄したいと考えられる方もいらっしゃいますが、現実的に所有権の放棄は難しいと考えております。この問題については、専門家の意見を求めることをお勧めします。
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