遺言は法律にで決められている要件に従わないと無効になってしまいますが、遺言の要件と同じくらい、遺言を書く能力があるかが、遺言の有効、無効に大きく影響します。
今回は、遺言能力がないと遺言が無効となる可能性があることについて解説して行きたいと思います。
遺言書の財産の包括的な記載と個別的記載の違い
遺言書を作成するには
遺言は15歳から作成することができ、法律で決められている要件に作成すれば誰でも作成することができます。
民法
民法 | e-Gov法令検索より引用
第一款 普通の方式
(普通の方式による遺言の種類)
第九百六十七条 遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。
(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
遺言の要件に従った場合でも遺言が無効になる可能性がある
遺言能力とは、遺言者が遺言の内容やあその効果を理解できる能力があることが必要であり、上記の能力がない場合は遺言が無効となってしまいます。
遺言能力とは簡単に言うと、遺言者(遺言を書いた人)が認知症などで判断能力がない若しくは著しく低下している場合は遺言が無効となる可能性があるということになります。
ただ、遺言を書いたときに遺言能力の有無の確認は難しく、遺言時における遺言者の精神上の障がいの存否、内容及び程度、遺言内容それ自体の複雑性、遺言の動機や理由、遺言者と相続人または受遺者との人的関係、交際状況、遺言に至る経緯などといったものが総合的に考慮される事になります。
遺言書が無効にならないように事前に対策をする
遺言書を無効としないために遺言者や相続人は事前に準備をする必要があると考えています。
遺言者ができる対策
遺言者ができる対策として、自筆証書遺言を作成するより、公正証書遺言を作成する方法が考えられます。
自筆証書遺言の場合は、厳格な要件が定められているため、要件を欠く遺言は無効とされることになります。
他にも遺言を作成したときの判断能力(意思能力)がわからないため、後から自筆証書遺言を書いた時に認知症だったなど、相続財産をもらえない若しくは少なかった相続人から遺言能力について問題だと指摘されることもあります。
そういった事を防ぐためには、公正証書遺言を作成することをお勧めいたします。
公正証書遺言は公証人に遺言を作成してもらえますし、証人も2名必要で、公正証書遺言の確認の際に、遺言能力があった事を公証人と証人が客観的に証明してもらえます。
そのため、当事務所では高齢のお客様の場合は、公証役場にて遺言を作成しております。
相続人ができる対策
相続人が事前に対策をすることは難しいと思いますが、事前に遺言を作成する予定と聞いていたら、遺言者が病院に通っている場合は、医師に診断書を作成してもらったり、客観的な証拠をできるだけ収集して遺言時における遺言能力を確認する事が必要だと考えます。
広告まとめ
遺言書を作成した後相続人間で争いになった場合に遺言能力が問題になることがあります。
遺言を作成する時は、遺言の書き方の決まりを守るだけでなく、遺言者に判断能力があったかが問題となります。
自筆証書遺言だと、後から意思能力があったかどうかを客観的に証明することは難しくなります。
そのため、遺言者が高齢で相続財産が大きい場合は、自筆証書遺言よりも公正証書遺言を作成することをお勧めいたします。
当事務所でも遺言書を作成するサポートを行っておりますので、ご不明点がある場合はご相談いただければ幸いです。
※手続きでご不明点がございましたら、是非当事務所のお問い合わせフォームからご相談ください
記事の内容は一般的な内容となっており、個別具体的な案件によっては結論が異なることもございます。
そのため、ご自身でお手続きをする際は、自己責任でお願い致します。