現在の会社法では、親族のみで経営することが認められており、株式を親族以外の第三者に譲渡させたくないと考える経営者も多いでしょう。親族や信頼できる共同経営者のみで経営を続けたい場合、株式譲渡制限を設けることが有効です。本記事では、株式譲渡制限を定める方法とその具体的な手続きを詳しく解説します。
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株式譲渡制限とは
株式譲渡制限とは、株式を他の株主や第三者に譲渡する際に、会社の承認を必要とする制度です。これにより、会社の意図しない人物が株主になるのを防ぐことができます。特に、親族経営や特定の共同経営者のみで経営を続けたい場合に有効です。株式譲渡制限は、企業の経営権を安定させるための重要な手段です。
法的根拠と適用範囲
会社法に基づき、企業は株式譲渡制限を設けることができます。会社法第107条では、譲渡制限株式として定款に定めることができるとされています。これにより、企業は経営権の安定を図ることができます。ただし、すべての株式に対して譲渡制限を設ける場合、法的な手続きを踏む必要があります。
株式譲渡制限の設定方法
株式譲渡制限の設定方法は以下の通りです。
株主総会の開催と決議
株式譲渡制限を設けるためには、まず株主総会を開催し、特殊決議を行う必要があります。特殊決議とは、議決権を行使できる株主の半数以上が出席し、そのうち3分の2以上の賛成を必要とする決議です。これは、株主にとって自由に株式を譲渡できなくなることが著しい不利益となるためです。
株主総会の手続き
- 株主総会の開催通知を株主に送付します。開催日時、場所、議題を明記し、少なくとも2週間前には送付することが望ましいです。
- 定款に従い、適切な手続きを踏んで総会を開催します。議長が議案を提案し、株主による質疑応答を経て、決議を行います。
- 譲渡制限を設けるための特殊決議で決議します。株主の出席率と賛成率を確認し、議事録に詳細を記録します。
定款の変更と登記
株式譲渡制限を定める場合、定款の変更が必要です。定款変更は特殊決議により行われ、議決権を行使できる株主の人数の半数以上、かつ議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
定款変更の手続き
- 株式譲渡制限に関する条項を定款に追加します。例えば、「株式の譲渡には会社の承認を必要とする」と明記します。
- 株主総会で定款変更案について特殊決議を行います。出席株主の過半数、かつ議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
- 定款変更が承認されたら、変更内容を法務局に登記します。必要な書類を揃え、速やかに手続きを行います。
株式譲渡制限のメリットとデメリット
株式譲渡制限のメリットとデメリットは以下の通りです。
株式譲渡制限のメリット
株式譲渡制限の最大のメリットは、企業の経営権を安定させることです。特定の株主のみが株式を保有することで、経営方針の一貫性を保ち、敵対的買収を防ぐことができます。また、親族経営を続けたい場合にも有効です。
メリットの詳細
- 経営権が特定の株主に集中するため、経営の安定性が増します。これにより、長期的な経営戦略の実行が可能となります。
- 株式譲渡制限により、外部からの敵対的買収を防ぐことができます。経営陣の意思決定が尊重され、企業の独立性が保たれます。
- 親族間での経営を続けたい場合、株式譲渡制限が有効です。信頼できる株主間での経営が可能となります。
株式譲渡制限のデメリット
一方で、株式譲渡制限にはデメリットもあります。株主間でのトラブルが発生する可能性があり、特に株式譲渡制限に反対する株主がいる場合、会社に株式の買い取りを請求されることもあります。また、株式の流動性が低下し、資金調達が難しくなることもあります。
デメリットの詳細
- 株式譲渡制限に反対する株主がいる場合、トラブルが発生する可能性があります。特に、株式の買い取り請求があると、会社の資金負担が増加します。
- 株式譲渡制限により、株式の流動性が低下します。これにより、新たな投資家の参入が難しくなり、資金調達が制約されることがあります。
- 株式譲渡制限の管理には、取締役会や株主総会での審査、リーガルチェックなどが必要です。これにより、管理コストが増加することがあります。
株式譲渡制限に関する議事録とリーガルチェックのポイント
株式譲渡制限に関する議事録とリーガルチェックのポイントは以下の通りです。
株主総会議事録の作成方法
株主総会で株式譲渡制限を決議した場合、その議事録を作成する必要があります。議事録には、議案内容、出席株主数、賛成・反対の状況などを詳細に記載します。また、株式譲渡制限に関する議事録のサンプルを用意しておくと、作成がスムーズです。
議事録作成の手順
- 株式譲渡制限に関する議案内容を詳細に記載します。議案の背景や目的、具体的な内容を明確にします。
- 出席した株主の人数を記録します。議決権の有無や議決権数も併せて記載します。
- 議案に対する賛成・反対の状況を記録します。議決権数に基づき、特殊決議が成立したかどうかを確認します。
- 議長と出席取締役が議事録に署名します。これにより、議事録の正当性が担保されます。
リーガルチェックの重要性と依頼方法
株式譲渡制限を導入する際には、リーガルチェックが欠かせません。専門家のアドバイスを受けることで、法的な問題を事前に回避することができます。行政書士に依頼する際は、経験豊富な専門家を選び、しっかりと相談することが重要です。
リーガルチェックの実施方法
- 経験豊富な行政書士や弁護士を選びます。事前に相談内容を明確にし、適切な専門家を選定します。
- 株式譲渡制限に関する法的アドバイスを取得します。定款変更や株主総会の手続きについて、具体的な助言を受けます。
- 作成した定款変更案や議事録を専門家に確認してもらいます。法的に問題がないか、適切な表現が使用されているかをチェックします。
株式譲渡制限に関するよくある質問
株式譲渡制限に関するよくある質問は以下の通りです。
株式譲渡制限の廃止方法は?
株式譲渡制限を廃止する場合も、株主総会での決議が必要です。廃止手続きは、株式譲渡制限を設ける場合と同様に、特別決議が必要です。また、定款の変更と登記手続きも行います。
株式譲渡制限を導入した場合の税務上の影響は?
株式譲渡制限を導入すると、税務上の影響も考慮する必要があります。特に、株主間での株式の売買や相続において、税務上の取り扱いが異なる場合があります。専門家のアドバイスを受け、適切な対策を講じることが重要です。
税務上の考慮点
- 株式譲渡制限により、株式の評価額が影響を受ける可能性があります。評価額の算定方法について、税務専門家に相談します。
- 株式譲渡制限がある場合でも、株式の譲渡益に対して課税が発生します。適切な税務申告を行うため、税務専門家のアドバイスを受けます。
- 株式譲渡制限がある株式の相続についても、税務上の対策が必要です。相続税の評価額や納税方法について、税理士などの専門家と相談します。
まとめ
株式譲渡制限を設けることで、会社の経営権を安定させ、親族経営や特定の共同経営者のみでの経営を維持することが可能です。ただし、株式譲渡制限を導入するには、特別決議よりも厳しい特殊決議が必要であり、法的手続きも複雑です。専門家の助言を受けながら、慎重に進めることが重要です。また、相続時に株式が分散するリスクを防ぐためにも、定款の規定を整備することが求められます。当事務所ではリーガルチェック(書類作成)の外部委託を承っております。ご依頼をご検討の方は、お問い合わせフォームからご相談いただければ幸いです。