住宅ローンのある不動産を相続したら?注意すべきポイント

相続手続き

身近な人が亡くなった際には、相続人全員で遺産分割協議を行い、被相続人の財産を誰の物にするかを話し合います。その後、被相続人(亡くなった方)名義の財産を各相続人に変更します。
特に、自宅を所有している方は、不動産の名義変更が必要となります。しかし、その不動産に住宅ローンが残っている場合、どのように対処すべきか疑問に思うかもしれません。
今回は、相続財産に住宅ローンが含まれている場合の対処法について解説します。

相続手続きの基本

身近な人が亡くなった際には、親族が相続手続きを進める必要があります。まず、戸籍を集めて相続人を確定し、被相続人の財産と遺言書の有無を調査します。遺言書が存在する場合は、その内容に基づいて遺産分割協議を行います。遺言書がない場合は、相続人全員で協議を行い、誰が相続するかを決定します。
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住宅ローンの基本

住宅ローンは、マイホームの購入資金を金融機関から借りることです。借りた金額(ローン元金)とは別に「利息」を支払う必要があり、この元金と利息の合計額を毎月少しずつ返済していくのが住宅ローンの基本的な仕組みです。

夫婦で住宅ローンを借りる方法

夫婦で住宅ローンを借りる場合、4つの方法があります。
単独債務、ペアローン、収入合算(連帯保証)、収入合算(連帯債務)。それぞれの方法にはメリットとデメリットがあります。適切な方法を選ぶためには、借入額と返済負担を考慮し、無理のない借り入れをシミュレーションすることが重要です。

夫婦の持分の割合

住宅を購入する際、持分割合をどのように決めるかが重要なポイントの一つとなります。持分割合は、一つの不動産を複数人で所有することを共有といい、共有者それぞれの所有権の割合のことを持分割合といいます。持分割合を適当に決めると、贈与税が発生する場合があります。
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住宅ローンがあった場合の対応

住宅ローンは法律でいうと、金銭消費貸借契約となりますので、住宅を購入するために金融機関等に借金があります。住宅ローンを組む際には、借り入れをして、購入した住宅に抵当権を設定していることが殆どだと思いますので、借り入れが残っていて、支払いをしないと抵当権が実行され競売によって換価されてしまう恐れがあります。ただし、住宅ローンを組む際に、団体信用生命保険に加入していることが多いと思いますので、その際にはその保険で住宅ローンを完済することになるかと思います。

団体信用生命保険とは

団体信用生命保険とは、住宅ローンの契約者(債務者)が返済中に亡くなった場合や高度障害状態になった場合に、住宅ローンの残債務を死亡保険金で完済する生命保険契約のことを指します。住宅ローンを組む際には、通常、団体信用生命保険への加入が条件となっていますが、加入できない場合もあります。
団体信用生命保険に加入している場合、住宅ローンの契約者である金融機関に連絡をして確認をしましょう。団体信用保険で残債務を完済できる場合は、問題ありませんが、特約などで支払われない場合は債務の承継が必要となります。
団体信用保険で完済できない場合、住宅ローンを引き継ぐものを決めなくてはなりません。債務の引継ぎは、遺産分割協議を行っても相続人の合意のみで行うことはできませんので、住宅ローンを組んでいる金融機関との交渉が必要となります。

保険金を受領するための必要書類

団体信用生命保険の手続きに必要な書類は以下の通りです。

  • 団信弁済届:団信弁済届は、死亡や高度障害状態で返済が難しくなった場合において保険金にて住宅ローンを精算(弁済)するための届書です。
  • 死亡証明書:契約者が死亡した場合は、死亡した事実を証明する書類として死亡証明書が必要です。
    また、金融機関によっては、以下の書類も必要となる場合があります。
  • 亡くなった方の戸籍謄本(出生から死亡までの分全て)
  • 亡くなった方の住民票
  • 相続人の実印・印鑑証明書
    ※具体的な手続きは金融機関により異なる場合がありますので、詳細は各金融機関にご確認ください。
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住宅ローンが残っている不動産を相続した場合の手続きと注意点

住宅ローンが残っている不動産を相続した場合、以下の手続きが必要となります。

  • 団体信用生命保険(団信)による住宅ローンの返済:まず、ローンを提供している金融機関に相談し、必要な書類を受け取ります。審査が無事通過すれば、保険金が金融機関に送金され、住宅ローンの残債はなくなります。
  • 相続登記:不動産の所有権を得た相続人は、被相続人から自分の名義に変更するために相続登記(=不動産の名義変更)を行います。
  • 抵当権の抹消手続き(登記):住宅ローンを完済した後は、法務局で抵当権抹消手続きを法務局で行います。この手続きには、不動産1つにつき1,000円の登録免許税がかかります。

相続放棄した場合は団体信用生命保険はどうなる

団体信用生命保険の保険金は、被保険者(住宅ローン債務者)が亡くなった場合に、契約者及び受取人である金融機関や保証会社等の住宅ローン債権者に支払われ、住宅ローンが消滅します。この保険金の請求手続きには、相続人の協力が必要となることがありますが、これは相続人による債務の弁済によって生じるものではないため、法定単純承認事由には該当しません。つまり、相続放棄をしても団体信用生命保険の保険金請求は可能です。ただし、借入先が民間の金融機関ではなく、独立行政法人住宅金融支援機構(フラット35)を利用している場合には注意が必要です。フラット35の団体信用生命保険は加入自体が任意であり、加入する場合の保険料の支払いは年払いで特約料を支払う必要があり、住宅ローン債務者が死亡した場合、年払いで支払った保険料のうち、未経過の月数分の保険料が返金されます。この返金された保険料は遺産と解され、相続人が返金された保険料を受領してしまうと、法定単純承認事由に該当することになりかねません。相続放棄を考えているのなら、受領は保留した方がよいでしょう。具体的な手続きについては、専門家に相談することをお勧めします。フラット35の団体信用生命保険(団信)について、相続放棄を行った場合の取り扱いは以下の通りです。

  • 団体信用生命保険に加入している場合:団信に加入していると、保険金(共済)により機構(旧公庫)の債務が全額返済されます。つまり、ローン契約者が亡くなった場合でも、団信が適用されていれば、遺族は住宅ローンの返済を引き継ぐ必要はありません。
  • 団体信用生命保険に加入していない場合:団信に加入していない場合、融資住宅を相続された方が債務を引き継ぎ、ご返済をしていただきます。相続される方が複数いる場合は、法定相続人のうち、返済能力のある方がお一人で機構(旧公庫)の債務を引き継ぐようお願いしているようです。
    以上の情報は一般的なケースについてのものです。法律や制度は変わる可能性があるため、最新の情報をご確認ください。

団体信用生命保険の一般的な相続税の取り扱い

相続税については、団信の保険金は相続人に渡らず直接住宅ローンを借りている金融機関に支払われるため、一度も相続人の手に渡らないため、相続財産として扱われず相続税もかかりません。
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まとめ

マイホームを購入する際には、金融機関から住宅ローンを組んで購入することが一般的です。その際に、団体信用生命保険に加入していることがほとんどですが、何らかの理由で加入していない場合は、債務者が亡くなると、住宅ローン(借金)も承継することになります。相続財産(資産)と違い借り入れは相手方があるため、相続人の合意のみで債務を承継することはできません。そのため、金融機関との交渉が必要となりますので、マイホームがあり残債務がある場合には直ぐに金融機関に確認をして、団体信用生命保険に加入の有無など話し合いをするようにしましょう。これらの手続きは複雑であり、専門的な知識が必要となるため、不動産や法律の専門家に相談することをお勧めします。これにより、スムーズな相続が可能となります。ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。私たちは、お客様の相続の問題を解決するために全力でサポートいたします。よろしくお願いいたします。

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プロフィール
この記事を書いた人
行政書士青嶋雄太

私は約10年間にわたり法律関連の仕事に従事してきました。司法書士事務所と行政書士事務所での経験を通じて、多くの案件に携わり、幅広い視点から問題を解決してきました。
私たちの事務所では、行政書士としての専門知識だけでなく、提携先の士業事務所と連携し、対応できない案件にも柔軟に対応しています。どんな問題でも、お気軽にご相談いただければ幸いです。

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