監査役と監査役会とは任期、報酬などについてわかりやすく解説します

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株式会社は所有と経営が分離しているため、株主が会社を所有して取締役や執行役が経営に関することを判断をします。
取締役の業務がいつも適正なら良いのですが、人間なので不正な行為や業務内容に法令違反がある可能性があります。
そのため、取締役が適正な業務をしているか監督する者が必要となります。
規模の小さい会社であれば、株主が監督することもできますが規模の大きい会社であれば、監査役を設置して監督させたほうが効率的です。
今回の記事では、監査役と監査役会について解説していきたいと思います。
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監査役とは

監査役とは、取締役の職務執行を監査して取締役の業務に定款や法令違反がないか調査をして、適切でない場合には是正措置をとることができます。(業務監査)
非公開会社では、監査役の権限を会計監査に限定することもできます。(会計監査)
会計監査とは、計算書類が会社の財務状態及び経営成績を適切に表現されているか、会社法の規定に従った利益処分がされているかを調査して違反がある時には是正する業務のことをいいます。
監査役の業務として業務監査と会計監査があります。

(定款の定めによる監査範囲の限定)
第三百八十九条 公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、第三百八十一条第一項の規定にかかわらず、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができる。

会社法 | e-Gov法令検索より引用

監査役の業務

監査役の業務として業務監査と会計監査が主な仕事となります。
取締役会設置会社であれば、取締役会にも取締役を監督する権限があります。
監査役は取締役により、法令定款違反の行為が行われていないかどうかを監査するものに限定されているため、取締役の職務そのものに問題があるかを監査するものでないとされていますが、実際には取締役の責任を追及する訴訟を提起する権限もあるため実質的に会社の利益になるかどうかの判断をすることもあります。

取締役会には取締役を監督する権限があるのに、監査役があるのは、監査役が業務の決定や執行に関わらない独立した立場で監督ができるため、取締役同士の取締役会よりも取締役を監督できるからです。
監査役は独立した機関という立場から会社、子会社の取締役、使用人、会計参与、執行役を兼ねることができません。
監査役と会社の関係は委任契約であるため、監査役は会社に対して善管注意義務を負います。
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監査役の選任方法と任期

監査役は、取締役と同様に株主総会の決議によって選任されることになります。
取締役が監査役の選任議案を株主総会に提出するには、監査役の同意(過半数の同意)を得なくてはならず、監査役は、監査役の選任を株主総会の議題にすることや、特定の者を監査役として選任する議案を株主総会に提出することを取締役に請求することもできます。
株主総会で選任された監査役の任期は4年で取締役の任期よりも長く設定されており、定款で任期を短縮することもできません。
取締役より任期が長いのは、取締役の方が先に任期が終了するため、監査役が再任を気しないで監査することを期待したものです。
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報酬と経費などの支払い義務

監査役の報酬は、定款で額を定めるか取締役と区別して株主総会の承認を受けなくてはなりません。
理由として、監査役の職務に相応しい報酬を確保することに目的があり、取締役のお手盛り防止と理由が異なるため、取締役と監査役の報酬を1個の議案として株主総会に提出することができません。

監査費用の支払い

監査役は監査費用の前払いを請求をすることができます。
監査役は委任契約なので、そもそも必要経費を請求できますので、改めて条文に記載する必要もないかと思いますが、会社法388条では当該監査役の職務執行に必要でないことを証明するものでなければ費用の前払いを拒むことができないため、民法の規定よりも監査役に有利になっています。
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取締役を監督するための規定

監査役には監査役を監督するために監査に必要な情報を収集する権限と違法や不当な行為があった場合に是正する権限があります。

情報収集権

監査役の権限として、監査に必要な情報を収集できるように権限が与えられています。
監査役は取締役会に出席しているため、代表取締役、業務執行取締役から職務の状況について定期的に報告を受けることができ、取締役、会計参与、使用人に会社の事業の報告を求めまたは自ら会社の業務及び財産の状況を調査することができます。
監査役の調査権は、就任している会社だけではなく、子会社にも調査権があり調査をすることができます。
取締役も会社に著しい損害を及ぼす恐れのある事実を監査役に報告をしなくてはなりませんので、監査役には、情報収集できるよう様々な権利が法定されています。

是正権限

取締役の行為に違法行為は不当行為があった場合に監査役はどう対処すれば良いのでしょうか。
監査役が違法行為を見つけた場合には、取締役(取締役会)へ報告して法令や定款違反行為や著しい不当な事実が行われる恐れがあることを報告して監査報告へ記載をします。
監査役は株主総会提出議案についても調査をしますが、法令、定款違反や著しく不当な事項があると認められる時には、その結果を株主総会で報告する必要があります。
取締役の業務に法令、定款違反行為をしまたはする恐れがある場合は、当該行為の差し止めを請求することができます。

監査役会とは

会社法では3名以上の監査役を構成員として監査役会を設置することができます。
公開会社である大会社では監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社、監査役会設置会社の中から選択ができます。
公開会社で大会社でない会社は監査役会を任意で設置することができます。
監査役会は3名以上の監査役で構成されていてその中の1名以上は常勤の者でなくてはならず、そのうち半数以上は社外監査役でならなければなりません。
社外監査役が半数以上必要なのは、会社経営者の影響を受けない監査役が必要だと考えられ監査役の独立性を高める効果があります。

監査役会の業務は法律で定められています

監査役会の業務内容として、監査報告書の作成、常勤監査役の選定と解職、監査の方針・会社の業務及び財産の状況の調査、その他の監査役の職務の執行に関する事項の決定、組織的・効率的な監査をするために監査役会において監査役の職務執行の分担を決定することを求められます。
監査役会設置会社では、監査役の選任議案についての同意権・提案権は監査役ではなく監査役会に与えられていること、監査役会の同意や提案は過半数による監査役会決議で行う必要がある点も注意が必要です。

社外監査役

社外監査役の資格として、個人である支配株主または親会社等の取締役、監査役、執行役、使用人でないこと、兄弟会社の業務執行取締役、執行役、使用人でないこと取締役、重要な使用人または親会社等の配偶者または二親等以内の親族でないことが必要です。
社外監査役に就任するには、過去に取締役などに就任していないという要件がありますが、就任前10年間と期間が限定されています。
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まとめ

監査役は会社の違法行為や不正会計が行われる度に法改正が行われます。
本来は監査役がきちんと監査をすれば良いのですが、個人では中々監査しずらい部分もあるため、監査役会を設置して監査役の人数を増やしたり社外監査役を置いたりして個人ではなく、集団で会社を監査するように法改正がなされていきました。

中小企業で家族経営である場合は、監査役会を設置して監査するというのは難しいと思います。
家族経営でも取締役に不正があった場合は監査役は是正しなくてはならず、職務について責任があります。
そのため、家族経営の企業でも法的な手続きを曖昧にせず法律に則り手続きをする必要があります。
法的な手続きや株式事務の書類作成は難しい部分もあると思いますので、書類作成の代行や自社の事務についてご質問がある場合は、当事務所の問い合わせフォームからご相談ください。

行政書士青嶋雄太
この記事を書いた人
行政書士青嶋雄太

私は約10年間にわたり法律関連の仕事に従事してきました。司法書士事務所と行政書士事務所での経験を通じて、多くの案件に携わり、幅広い視点から問題を解決してきました。
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