株式会社は、取締役と株主総会を必ず設置しなくてはなりません。
株主総会や取締役会で代表取締役を選定した場合はその代表取締役は社内の業務や社外での取引で会社を代表します。
代表取締役を選任しないことも可能ですが、実務的に複数の取締役がいる場合は代表取締役を選任します。
今回の記事では、代表取締役の職務内容と取締役との権限の違い選任方法について解説していきたいと思います。
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代表取締役を選任するには
株式会社では、取締役を必ず設置しなくてはなりません。
取締役が複数いる場合は各自会社を代表することになりますので、取締役に就任すると各自が会社を代表することになりますが、複数の取締役がいる場合は、各自が会社を代表してしまうと、問題が生じる可能性もあるため代表取締役を選任することが一般的です。
代表取締役を選任した場合は、代表取締役以外の取締役は会社を代表しなくなります。
代表取締役と取締役の違いと選任する方法
代表取締役と取締役の違いは、代表権の有無です。
代表取締役の事を社長と呼ぶことがありますが、社長とは役職の一つで専務などと同じように法律で定められた名称ではありません。
法律では取締役や代表取締役と呼びます。
代表取締役を選任する方法は主に下記の4つです。
代表取締役の選任方法
- 定款に代表取締役の氏名を記載する
- 株主総会の決議によって選任する
- 定款に、取締役の互選により代表取締役を定める旨を記載して、取締役の互選によって選任する
- 取締役会によって選定する
非公開会社で取締役会非設置会社の場合は、定時株主総会で取締役を選任して、次の議案で代表取締役を選任することが多いです。
注意が必要なのは、定款に3の規定がある場合は、株主総会で代表取締役を決めることはできず、取締役の互選で決める必要があり、定時株主総会で取締役を選任した後に取締役の過半数の同意をもって代表取締役を選定することになります。
取締役会設置会社では、取締役会の決議で取締役の中から代表取締役を選定します。
定款に代表取締役は株主総会の決議によって定めることができる旨の定めをおいた場合は株主総会で選定することも可能とされています。
株主総会、取締役の互選、取締役会で選定された取締役は就任を承諾することによって代表取締役になります。
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代表取締役の代表権
代表取締役は、社内と社外の業務執行権限を有しています。
代表権のない業務執行取締役にも社内に関しては業務執行をする権限はありますが、対外的な業務執行には代表権が必要です。
代表取締役には会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限が与えられているためとても強い権限を持っています。
取締役が複数いるため、全ての取締役が代表権を持つため、各取締役が会社を代表して取引をする可能性があるため、実務的には代表取締役を選任します。
代表取締役に権限濫用があった場合
代表取締役が代表権を濫用した時にはどうすれば良いのでしょうか。
権限濫用の例として個人的な借金を会社名義で借りた場合は権限濫用とされると考えられます。
代表取締役が権限を濫用して取引をした場合心理留保を類推適用して、会社は悪意または過失のある相手方の取引の無効を主張できるとされています。
(心裡り留保)
民法 | e-Gov法令検索より引用
第九十三条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
代表取締役が任期満了、辞任、解任などで代表取締役でなくなったのに代表取締役として振る舞って対外的に契約をした場合はどうなるのでしょうか。
代表取締役でないのに代表取締役のような行動したものを表見代表取締役と言いますが、そういった者が出た場合はどうやって対処すれば良いのでしょうか。
会社の代表権があると認められるには相手が勘違いする外観の存在があることが必要で、社長、副社長、総裁など取引前に相手が代表権をもっていると勘違いするような外観があることが必要です。
会社が取締役の名称を付した会社に問題があるため、代表権のない者に代表取締役の名刺を使用させていた場合や社内で代表取締役と呼んでいた場合は問題となります。
表見代表取締役の取引で保護されるには、取引の相手方が代表取締役でないことを知らないことが条件となりますが、重大な過失がある場合は保護されません。
表見代表取締役が認められると善意の第三者は保護されるため、対策として代表権を持っていない者に名刺など使わせないこと第三者に代表取締役と勘違いさせてしまう外観を作らないことが重要です。
(表見代表取締役)
会社法 | e-Gov法令検索より引用
第三百五十四条 株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。
代表取締役の解職
代表取締役を解職するには、定款の定めに直接記載がある場合はその文面を削除したとき、株主総会の決議、取締役の過半数の同意があった場合、取締役会の決議で解職をすることができます。
取締役の任期が満了して新たに選任されなかった場合は取締役の地位を失うため、資格喪失により代表取締役も退任することになります。
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まとめ
代表取締役は社内と社外を代表する権限があり、代表取締役には会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限が与えられているためとても強い権限があります。
その権限を利用して、代表取締役が私的な目的で会社名義で取引をした場合の手続きも考えられています。
代表取締役は登記事項となっておりますので、最終的に法務局で書類が通るようにきちんと書類を作成する必要がありますし、登記を変更することによって第三者にも代表取締役が変更されたことがわかります。
株主総会などの書類でご不明点がある場合は当事務所にご相談ください。