株主の権利行使に利益を供与してはならない総会屋対策

中小企業支援

株式会社は最低でも年に1回は株主総会を開催しなくてはなりません。
株主総会を開催するには、開催する会場や日時が決まったら、株主に招集通知を発送して招集して提出された議案の是非を決めて株主の権利を行使します。
株主会社は株主の権利行使に対して金銭を支払うなどの利益供与を行ってはなりません。
今回は、株主の権利行使の利益供与の禁止について解説させていただきます。
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株主の権利行使に関する利益供与は禁止されている

考え事をする女性

株主は株主総会で事由に権利を行使することができますが、株式会社は株主の権利行使に対して金員などの財産上の利益を供与することはできません。
内容として、会社の取締役、監査役、執行役などが、株主の権利の行使に関し、会社または子会社の計算で利益を供与したときは、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられるとされており、役員が株主の権利の行使に対しての罰則が設けられております。
罰則は、利益の供与を要求した株主も同様とされておりますので、役員だけでなく要求した株主も処罰されることになります。

会社法
(株主等の権利の行使に関する利益供与の罪)
第九百七十条 第九百六十条第一項第三号から第六号までに掲げる者又はその他の株式会社の使用人が、株主の権利、当該株式会社に係る適格旧株主(第八百四十七条の二第九項に規定する適格旧株主をいう。第三項において同じ。)の権利又は当該株式会社の最終完全親会社等(第八百四十七条の三第一項に規定する最終完全親会社等をいう。第三項において同じ。)の株主の権利の行使に関し、当該株式会社又はその子会社の計算において財産上の利益を供与したときは、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2 情を知って、前項の利益の供与を受け、又は第三者にこれを供与させた者も、同項と同様とする。
3 株主の権利、株式会社に係る適格旧株主の権利又は株式会社の最終完全親会社等の株主の権利の行使に関し、当該株式会社又はその子会社の計算において第一項の利益を自己又は第三者に供与することを同項に規定する者に要求した者も、同項と同様とする。
4 前二項の罪を犯した者が、その実行について第一項に規定する者に対し威迫の行為をしたときは、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。
5 前三項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
6 第一項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。

会社法 | e-Gov法令検索より引用

株主の権利行使は何故禁止されているのか

疑問に思う女性

株主の権利行使に関して利益供与が禁止されたきっかけとして、総会屋対策があげられます。
総会屋とは、株主総会を何事もなく平穏に乗り切ることを約束して、株式会社から金員を受け取って便宜を図ってもらう株主の事をいいます。
今は殆どいないと思いますが、会社が支払いを拒めば株主総会で暴力、威圧を用いたりして、株主総会を混乱させると脅しをかけてる株主がおり、株主総会でそういった株主からのつるし上げを嫌がった株式会社が、特定の株主に対して金員を支払うという例がありました。
会社が特定の株主の脅しに屈することで、会社の財産を無駄に使ったり、議事の公平性が害されるため、厳重な規則がおかれることになりました。
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株主に金員を渡してしまったら

株主の権利行使に関して利益供与を行ってしまったら罰則以外にどういった効果が適用されるのでしょうか。
株主の権利行使に関して行った利益供与は無効とされ、会社財産の回復を図るための手続きがとられることになります。
会社が利益供与をする際は取締役が関わっていると考えられますので、そういった取締役も連帯して供与額の支払い義務を負うことになり、直接関わっていなくとも、利益供与に関する職務を怠った取締役も責任が追及されることもあります。
利益供与した取締役は無過失であることが証明されれば免責されることになります。

株主の権利行使の定義

株主の権利行使に当たる行為として、株主の権利行使に影響を及ぼすようなことで、例えば、 賛同を議決権を行使した株主1名に商品券を配ったり、総会屋などが株主総会において発言しないことと引き換えに金員の供与を受けるように、権利をする若しくは行使しない事に対しての利益供与が対象となります。
どこまでの範囲が株主の権利行使に関しての利益供与かという判断は難しいと思いますが、判断基準として、正当な目的に基づき供与される場合であって、個々の株主に供与される額が社会通念上許容される範囲内のものであり、株主全体に供与される総額が会社の財産的基礎に影響を及ぼさない場合は例外的に違法性はないとされますが、事前に専門家に相談することをお勧めいたします。

まとめ

今回の記事では、株主の権利行使に関する利益供与の禁止について解説させていただきました。
上記の規定は総会屋対策として制定されたものですが、株主の議決権行使に関して特典をつける行為も利益供与とされる事があります。
そのため、会社としては一定の株主に利益を与えてはならないことを取締役全員に周知させ、利益供与が行われないように注意しなくてはなりません。
どの行為が利益供与にあたるのかは、個別具体的に判断されるため、専門家に相談することをお勧めいたします。

行政書士青嶋雄太
この記事を書いた人
行政書士青嶋雄太

私は約10年間にわたり法律関連の仕事に従事してきました。司法書士事務所と行政書士事務所での経験を通じて、多くの案件に携わり、幅広い視点から問題を解決してきました。
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