グローバル化が進む現代において、企業は多様な才能を求めて世界中から人材を集めています。しかし、外国人を雇用するには予期せぬ落とし穴が存在します。外国人の職歴や学歴詐称は、企業にとって無視できないリスクとなっています。企業が直面するリスクとその対策について、解説をします。
経歴詐称について
経歴詐称とは、一般的に学歴や職歴を偽ることを指します。具体的には、自分の学歴や職歴、スキル、経験などを詐称、つまり事実と異なるように偽ったり、誇大に表現したりする行為をいいます。しかし、経歴詐称行為は基本的には犯罪ではありません。一定の状況下で経歴詐称行為を行うことが犯罪につながる可能性があります。
私文書偽造罪(刑法第159条)
履歴書などの私文書に虚偽の事実を記載した場合、三ヶ月以上五年以下の懲役刑を受ける可能性があります。ただし、履歴書に偽名を使用した場合や、卒業証明書や資格の取得証明書などを偽造した場合には、私文書偽造罪に問われる可能性があります。
詐欺罪(刑法246条)
経歴詐称をして他人を欺き、金品などの財物の交付を受けたり、財産上の不法の利益を得たりすると、詐欺罪が成立します。
軽犯罪法違反(軽犯罪法1条15号)
学位などを詐称した場合、拘留または科料に処すると規定されています。
日本における外国人の職歴や学歴詐称問題について
日本では、学歴証明書、資格証明書、その他採用の際に提出される証明書類の偽造確認や、リファレンスチェックをしている企業はまだ少数です。しかし、外国人雇用が進む中で、海外からの採用候補者の中には、もしかしたら、経歴詐称が多く普及している国から来ている人もいるかもしれません。
また、海外では、公式には認定されていないが、大学卒業と偽り、実際に就学しなくても金銭で高等教育の学位(もちろん通用性はまったくない)を授与する機関や団体が多く、これらは「ディプロマミル(diploma mill)」と呼ばれ、問題視されています。
以上のことから、外国人採用に際しては、経歴詐称の可能性に注意を払い、適切な審査やリファレンスチェックを行うことが重要であると言えます。また、異文化理解の一環として、異なる文化背景から来る外国人材の採用の際の注意点を理解することも重要です。これらの対策は、雇用後のトラブル防止だけでなく、企業の信用を守ることにも繋がります。
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日本で働く外国人が経歴詐称が発覚した場合
日本で働く外国人が経歴詐称が発覚した場合、以下のような法律上のリスクと責任があります。
会社に対する責任
経歴詐称が発覚した場合、多くの会社では懲戒処分を行います。一般的な会社では就業規則で、入社後にその経歴に偽りがある場合には、懲戒解雇を行うなど、何かしらの懲戒方法が記載されています。
法律上の処分
外国人が就労ビザであれば、外国人と雇用先の企業に関する様々な資料を添付して申請します。その内容に偽りがあった場合には、偽りや不正の手段によって在留の許可を受けたとされ、VISA(在留資格)の取り消し処分の対象となり、その外国人は退去強制となる可能性があります。
在留資格の取消
在留資格の取消しは、入管法の第22条の4第1項に規定されており、法務大臣は、一定の事実が判明したときは、外国人が現に有する在留資格を取り消すことができます。
退去強制
在留資格が取り消されることとなった場合であって、一定の事項に該当するときは、直ちに退去強制の対象となります。
経歴詐称を防ぐために企業が取るべき具体的な対策
経歴詐称を防ぐために企業が取るべき具体的な対策について以下に記載します。
書類の確認方法
応募者には詳細な履歴書を提出してもらい、その中には教育歴、職歴、スキル、資格などがの情報が含まれるようにして確認してください。学歴や資格については、可能な限り証明書を提出してもらうようにします。また、これらの証明書の真偽を確認するために、発行元に直接連絡を取ることも考えられます。
面接時の注意点
面接時には、応募者が履歴書に記載した経験やスキルについて具体的な事例を尋ねます。これにより、応募者が実際にそのスキルを持っているかどうかを確認できます。
経歴詐称が疑われる場合の対応の流れ
経歴詐称が疑われる場合、企業は詳細な調査を行うべきです。これには、疑われる情報の再確認、関連する証明書の再確認、参照先への再連絡などが含まれます。必要に応じて、応募者と直接対話を行い、疑問点について説明を求めることも重要です。詐称が確認された場合、企業は法的措置を検討することも考えなくてはなりません。
これらの対策は、経歴詐称を防ぐだけでなく、企業が適切な人材を採用するのにも役立ちます。ただし、これらの対策を実施する際には、プライバシーの保護や個人情報の取り扱いについての法律を遵守することが重要です。また、企業は常に公平で透明な採用手続きを維持するべきです。
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まとめ
この記事は、外国人の職歴や学歴の詐称という深刻な問題について詳細に分析し、その影響と対策について包括的に説明しています。外国人の経歴詐称は、企業にとって大きなリスクをもたらす可能性があります。それは、企業の信頼性を損なうだけでなく、業績にも影響を及ぼす可能性があります。
この問題を防ぐためには、採用プロセスの見直しや背景調査が重要です。採用手続きの見直しには、面接の質問の改善や、応募者の経歴を確認するための具体的な手順の設定が必要です。
以上のように、外国人の経歴詐称問題は、企業にとって重要な課題であり、その解決には様々な対策が必要とされています。
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