社会的な変化をもたらす力として、NPO法人とNGOは重要な役割を担っています。しかし、これらの組織がどのように機能し、どのように異なるのかについては、多くの人々が知らないことが多いと思います。この記事では、NPO法人とNGOの基本に焦点を当て、それぞれの組織の定義から始めて、法的枠組みや活動目的の違い、そして実際の設立手続きに至るまで、詳細に解説していきます。
NPO法人とは

特定非営利活動法人(NPO法人)は、特定非営利活動を行う団体に法人格を付与することで、市民の社会貢献活動を促進する制度です。NPO法人は、特定非営利活動に係る事業とその他の事業を行うことができ、情報開示や監視を通じて自主的な運営を行います。特定非営利活動とは、20種類の分野に該当する活動であり、不特定かつ多数のものの利益に寄与することを目的とするものです。
NGOとは
NGO(非政府組織:Non-Governmental Organization)とは、政府や国際機関などには属さない民間組織で、社会的な問題や課題の解決・人権の促進・環境保護・教育の提供など、さまざまな目的を持って活動している団体を指します。NGOは利益を主な目的にせず、世界各地で国際協力活動に取り組んだり、国際機関や政府への政策提言活動に取り組んだりしています。
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NPO法人とNGOの違い

NPO法人とNGOの違いについて、以下のように理解することができます。
法的な枠組みの違い
- NPO法人: NPOは「Non-Profit Organization」の略で、日本では特定非営利活動法人(通称NPO法人)をいいます。NPO法人は、法人格を取得することで社会的信用が高まり、寄付や資金調達の際に有利になるなどのメリットがあります。
- NGO: NGOは「Non-Governmental Organization」の略で、非政府組織を意味します。NGOはその名の通り政府に属さない民間団体で、国際協力に携わる組織をいいます。ただし、「NGO法人」という法人格は存在せず、NGOが法人格を取得したいときには、NPO法人や一般社団法人などが選択肢になり得ます。
活動の焦点と目的

- NPO法人: NPO法人は主に国内的な活動に重点を置き、地域社会の課題解決に取り組む場合が多いです。その活動は、社会的な課題の解決や公益の増進を目指しています。
- NGO: 一方、NGOは国内外の社会問題に対して活動するため、国際的な視野が求められます。NGOの活動内容は、軍縮、人権、開発や環境保全など多岐にわたります。
以上のように、NPO法人とNGOは、それぞれ異なる法的枠組みと活動の焦点を持っていますが、その目的は共通しており、社会的な課題の解決や公益の増進を目指しています。また、NPOとNGOは違いが明確に表れるような対立する概念ではなく、共存できる言葉であると理解されています。具体的な活動内容や目指す目的は、各団体の目標によります。
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NPO法人の設立

NPO法人の設立について詳しく説明します。
設立に必要な条件
NPO法人を設立するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 主たる目的が特定非営利活動であること
- 営利を目的としないこと
- 主たる目的が宗教および政治活動ではないこと
- 特定の公職者(候補者を含む)もしくは政党を推薦、支持、反対することを目的としないこと
- 10人以上の社員を有するものであること
- 暴力団およびその構成員、もしくは構成員でなくなった日から5年以内の者の統制下にある団体でないこと
- 役員のうち、報酬を受ける者の数が役員総数の3分の1以下であること
- 社員における資格や得喪に関して不当な条件を付さないこと
設立手続きの流れ
NPO法人の設立手続きは以下のような流れが必要です。
- 所轄庁(都道府県や市区町村)で認証手続きをする
- 縦覧(2週間)~審査(2ヶ月程度)、認証完了
- NPO法人の設立登記手続き
- 所轄庁へ書類を提出
設立に必要な書類は以下の通りです。
- 定款(法人の目的、名称、特定非営利活動の種類などを記したもの)
- 役員名簿 (役員ごとの報酬の有無を明記)
- 役員の就任承諾書及び誓約書の謄本
- 役員の住所又は居所を証する書面(住民票など)
- 社員のうち10 人以上の者の名簿
- 団体確認書
- 設立趣旨書
- 設立についての意思の決定を証する議事録の写し
- 設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書
- 設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書
以上がNPO法人の設立に必要な条件と手続きの流れです。設立にあたっては、これらの条件と手続きを正確に理解し、適切に行うことが重要です。具体的な手続きや必要な書類は所轄庁により異なる場合があるため、設立にあたっては行政書士に依頼をするか所轄庁に確認することをお勧めします。
NGOの設立と運営について

NGOの設立と運営については、以下の手順が一般的です。
ミッションの決定
NGOを設立する際に最も重要なのは、ミッション(目的)を明確にすることです。これは、団体が解決しようとする具体的な社会問題を定義します。
活動の決定
目標に基づいて具体的な活動を計画します。これは、問題解決のための具体的な手段や方法を決めます。
ホームページ・SNSの作成
活動の進行状況を公開し、支援者や関心を持つ人々とコミュニケーションを取るためのプラットフォームを作成します。
寄付・ボランティアの募集
活動を継続するためには、資金や人材が必要です。寄付やボランティアを募集することで、これらのリソースを確保します。
NGOの設立には法人格の取得が必要ですが、NGOと名乗るためには特定の手続きは必要ありません。活動を始めれば、市民団体としてNGOと名乗ることができます。しかし、法人格を取得することで、社会的な信頼を得やすくなり、助成金に応募したりする際に有利になります。
国際的な活動への参加については、NGOは国際的な社会課題に対して取り組む政府以外の団体であり、その活動のフィールドは国内外を問わず、目的や活動内容も多種多様です。中間支援組織に相談することで、どのような活動をするかのヒントを得ることができます。また、国連は市民の直接の代表であるNGOの参加を前提としており、各国が十分な国際協力を行うには、政府だけでなく、NGOも常に参加し、他国の政府やNGOと地球社会の課題に取り組んでいくことが不可欠であるとされています。
資金調達と管理については、NGOの収入源は自己資金と呼ばれる「会費」「寄付」「事業」と、非自己資金と言われる「受託事業」「助成金」の二種類があります。自己資金とは収入事業で得られる資金のことで、非自己資金とは特定の事業に対して政府や民間から交付や委託をされる資金を指します。また、資金調達の安定化とともに、財務内容の強化もNGOに求められています。適切な財務管理やリスク管理が必要です。
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メリットとデメリット

それぞれの組織形態には、特有のメリットとデメリットがあります。
NPO法人を設立するメリット
- 税制面での優遇: NPO法人は、特定非営利活動に分類される事業には、法人税が課されません。会費など収益事業以外の収入に対する課税が免除されています。
- 社会的信用度が高まる: NPO法人は、法律によって「利害関係人への書類の公開」や「貸借対照表の公告」が義務付けられています。
- 人材を雇用できる: NPO法人は、任意団体とは異なり、非営利ですが「法人格」を有しています。よって、社会的な信用が高く、人材を雇い入れやすくなっています。
NPO法人を設立するデメリット
- 活動内容に制約がある: NPO法人化により、社員総会又は理事会での合意が必要になり、任意団体の時のように、思いついたらすぐに行動するといった、機敏な活動はできなくなります。
- 設立に時間と手間がかかる: NPO法人の設立には厳格な認証をパスする必要があります。そのため、営利法人と比較して設立に時間と手間がかかります。
NGOを設立するメリット
- 社会的課題への直接的な取り組み: NGOは、特定の社会的課題に対して直接的に取り組むことができます。これにより、具体的な問題解決に貢献することが可能です。
- 国際的な活動の展開: NGOは、国境を越えて活動することが可能です。これにより、世界的な課題に対する取り組みが可能となります。
NPO法人を設立するデメリット
- 資金調達の難しさ: NGOは、寄付や助成金などに依存することが多く、安定した資金調達が難しい場合があります。
- 法人格取得の手間: NGOを法人化する場合、NPO法人や一般社団法人などの法人格を取得する必要があります。これには手間と時間がかかる場合があります。
それぞれの組織形態には、特有の特徴と課題があります。設立を考える際には、目指す活動内容や目標、必要な資源などを考慮し、最適な形態を選択することが重要です。具体的な手続きや要件については、行政書士などの専門家の意見を求めることをお勧めします。
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まとめ
NPO法人とは、特定の社会的目的を達成するために設立される非営利の組織です。一方、NGOは政府とは独立して活動し、しばしば国際的な問題に取り組む非営利団体です。
NPO法人とNGOの主な違いは、法的な枠組みと活動の焦点にあります。NPO法人は国内法に基づいて設立され、特定の社会的目的に焦点を当てていますが、NGOはより広範な国際的な問題に対応します。
NPO法人の設立プロセスには、必要な条件の確認と複数の手続きが必要です。これには、目的の明確化、メンバーの募集、必要書類の準備などがあります。
NGOの設立と運営は、国際的な活動への参加と資金調達の管理が重要です。
NPO法人の設立は手続きが煩雑なため、行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。
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