特別受益の持ち戻しの制度や免除や寄与分は相続を公平にする制度です

相続手続き

相続人の中に家や高価な車などを生前に贈与を受けていた場合は、生前に何ももらっていない相続人と不公平になってしまいます。
その場合は、特別受益として、相続財産に戻し(持戻し)、それぞれの相続分を改めて計算し相続を行います。
他にも、亡くなった方の財産の維持または増加について特別に寄与した相続人がいる場合に他の相続にと同じ扱いにしてしまうと不公平です。
今回の記事では、相続人間の公平を図る制度である特別受益と寄与分について解説します。

特別受益とは

特別受益とは、相続人間の公平を図るために、相続人に対し被相続人から、一定の遺贈を受けたり、婚姻や養子縁組のためや、生計の資本として贈与を受けた相続人がいるときはその財産を特別受益として、遺産分割時などに清算します。
生前に高価な車や、マイホームなどを援助して貰っていた場合に、その援助してもらった金額などを計算に入れないと、不公平が生じて争いの種になることがあります。
そのため、援助を受けた財産を控除して、その残額を援助を受けた相続人の相続分にして不公平を少しでも解消しようとする制度です。
簡単に説明すると、生前にもらった財産を引いて、生前に贈与を受けていた人の相続する金額を減らすということです。
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援助してもらった金額が相続する金額を超えてしまった場合

生前に援助してもらった金額が相続分を超えている場合はその金額を他の相続人に支払う必要はありません。
その代わり、今回の相続では新たに遺産を取得できません。
ただし、援助を受けた金額が、他の相続人の遺留分を侵害する場合は、その限度で遺留分侵害額請求の対象となる可能性があります。

特別受益の持ち戻し

相続財産に特別受益を戻して加算すること具体的相続分を計算することを特別受益の持ち戻しといいます。

配偶者保護のための持戻し免除

遺言でも、持戻しを免除する規定を記載することができますが、持戻しを免除する旨の遺言がなくとも、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方に対して、実際に住んでいる土地と建物を遺贈又は、贈与した場合は、持戻しの免除規定がなくても、持戻しを適用しないという意思表示が推定されます。

(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
第九百四条 前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。

民法 – e-Gov法令検索より引用

寄与分とは

寄与分とは、被相続人の財産の維持または増加について特別に貢献した相続人がいる場合に、他の相続人と同じ扱いをするのは、不公平なので公平を図るため、貢献した人に実際の相続分より多く財産を取得させようとした制度です。
寄与分で、介護をした相続人が他の相続人と同じ扱いはおかしいと思われる方もいると思いますが、介護の場合は相続人に扶養義務があり、単純に介護をするだけでは、寄与分として相続の金額に反映されるということは、難しいと考えられます。
現実的には、親の介護というのは、肉体的にも精神的にも辛いものがあるため、遺産分割協議で金額を反映させるのが良いかと思います。
話し合いが纏まらない場合は、最終的に家庭裁判所が判断をします。

(寄与分)
第九百四条の二 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4 第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があった場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。

民法 – e-Gov法令検索より引用

寄与分の対象になる人

寄与分は相続人しか受け取ることができませんでしたが、法改正で特別の寄与として、寄与分を受け取ることができるのは、共同相続人、代襲相続人、養子、相続人の配偶者、前配偶者(相続人の寄与と同視できる場合のみ)など一定の範囲の親族が寄与分を受ける範囲と考えられております。
親族とは、6親等内の血族(被相続人と血がつながっている人)、配偶者、3親等内の姻族(被相続人の配偶者と血がつながっている人)のことを言います。
寄与分は法改正され、新民法では、相続人の親族を対象にしています。
以前は相続人にしか寄与分は認められておらず、相続人の配偶者が、相続人の親の看護をした場合、遺言を残すしか確実に遺産を残すことができませんでしたが、法改正で、相続の開始後、相続人に対して支払いを請求でき、当事者で揉めた場合は、家庭裁判所で協議に代わる処分を請求することができます。
この場合でも、単に介護を行っただけでは寄与分が認められるわけはないので注意が必要です。
配偶者などが、請求する特別の寄与には、時効があり相続を知った時から6か月、相続開始から1年以内に請求しなくてはなりません。
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第千五十条 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。
以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者
は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月
を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。
3 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。
4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
5 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。

民法 – e-Gov法令検索より引用

どんな行為が寄与とされるのか

寄与行為は、主として無償、もしくはこれに準じるものである必要があり、もし対価を得ていれば、寄与行為とは認められません。
特別な寄与行為と認められる事案は個別具体的に判断されることになりますが、扶養義務などで、通常期待される以上の貢献をしなくてはなりません。
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まとめ

特別受益の調整は、亡くなった方から、生前に特定の相続人にだけ、他の相続人よりも高価なものをもらっていたり、結婚費用などを出してもらっていた場合に遺産分割協議の際に、考慮して話し合いをおこない、調整をします。
ただ、どの財産が特別受益にあたるのかは、個別に判断しなくてはならず、あまり細かく追及してしまうと争いの原因になってしまう可能性もあります。
寄与行為は、なんでも認められるわけではなく、かなり厳格な要件を満たす必要があり、確実に相続人や、相続人の配偶者に財産を取得させるためには遺言書を残す必要があります。
遺産分割協議を行うときは、相続人も実際に介護や看護した人をある程度優遇して、財産を多く渡し感謝の気持ちを伝えるのも大事かと思います。
寄与分に関しては、個別判断となりますので、専門家に相談した方が良いかと思います。

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プロフィール
この記事を書いた人
行政書士青嶋雄太

私は約10年間にわたり法律関連の仕事に従事してきました。司法書士事務所と行政書士事務所での経験を通じて、多くの案件に携わり、幅広い視点から問題を解決してきました。
私たちの事務所では、行政書士としての専門知識だけでなく、提携先の士業事務所と連携し、対応できない案件にも柔軟に対応しています。どんな問題でも、お気軽にご相談いただければ幸いです。

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