株式会社の目的を変更する手続きは、企業の成長や戦略転換において避けて通れない重要な手続きです。新たなビジネスチャンスを追求したい、あるいは既存事業の見直しを検討している法務担当者の皆様、この記事では、目的変更手続きの全貌をわかりやすく解説します。法律的な要件や具体的な手続きの流れ、必要な書類や費用について、順を追って詳しく説明します。最後までお読みいただくことで、目的変更手続きに対する不安を解消し、自信を持って対応できるようになります。
株式会社の目的変更の必要性
株式会社の目的変更は、企業の事業内容を法的に認可された範囲内で変更するための重要な手続きです。事業の多角化や市場の変化に対応するためには、会社の目的を適時に見直すことが必要です。例えば、新たなビジネスチャンスを追求する場合や、既存事業を拡大・縮小する場合、目的変更が必要になることがあります。
株式会社の目的変更が必要な場面
- 例えば、IT企業が新たに飲食業に進出する場合、定款の目的に「飲食業」を追加する必要があります。
- 特定の事業分野における法改正により、定款の目的を変更しなければならない場合があります。
- M&Aや事業譲渡などに伴い、目的を変更することがあります。
株式会社の目的変更手続きの流れ
株式会社の目的変更手続きの流れは次の通りです。
目的変更の準備と事前確認
目的変更を行う前に、現行の定款を確認し、変更が必要な箇所を明確にします。また、目的変更が企業の戦略にどのように影響するかを評価し、関係者との事前調整を行います。
目的変更の決議手続き
株式会社の目的変更は、株主総会での特別決議が必要です。決議の際には、具体的な変更内容を明示し、株主に対して十分な説明を行うことが求められます。
目的変更の登記手続き
株主総会での決議後、目的変更の登記手続きを行います。これは、法務局に登記申請することで完了します。登記手続きが完了するまでは、1週間から2週間程度時間がかかるため、迅速に対応することが重要です。
目的変更手続きの具体的な手順
目的変更手続きの具体的な手順を解説します。
株主総会の開催
目的変更のためには、まず株主総会を開催します。株主総会の招集通知は、開催日の2週間前までに株主に送付しなければなりません。この通知には、目的変更に関する議案を明示します。
定款変更の決議
株主総会で目的変更の議案を審議し、特別決議を行います。決議が承認された場合、議事録を作成し、署名・捺印を行います。議事録は、登記手続きに必要な重要書類となります。
変更登記申請の準備
定款変更の決議が完了したら、登記申請の準備を行います。必要な書類を揃え、申請内容を確認します。必要書類には、株主総会議事録、株主リスト、登記申請書などがあります。
登記申請書類の作成
登記申請書類を正確に作成することが重要です。管轄や書類に誤りがあると、申請が受理されなかったり、再提出が必要になることがあります。書類の記載内容を正確に確認し、法務局の指示に従って作成します。
法務局への提出と完了
作成した書類を法務局に提出し、登記申請を行います。申請が受理され完了すると法人の謄本を取得できるようになるため、登記事項が変更されているかを確認して、目的変更手続きが完了します。
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目的変更手続きに必要な書類
目的変更手続きに必要な書類については以下の通りです。
株主総会議事録
株主総会での決議内容を記録した議事録です。議事録には、会議の開催日時、場所、出席者、議案の内容、議決結果などを詳細に記載します。株主リストも必要になります。
定款の変更点
定款の変更点を明示した書類です。登記にしようするわけではありませんが、変更前後の内容を比較し、具体的にどの部分が変更されたかが一目でわかります。
登記申請書
登記申請書には、会社名、代表者名、変更内容などを記載します。法務局に提出するため必要な書類です。
会社の目的を変更する時の議事録の作成方法
株式会社では定款で会社の目的を定めておかなければなりませんが、事業をしていくうえで、新しい事業を始めることがあるかと思います。会社は定款の目的に記載がある事項以外のことができないため、事業を始める前に株主総会を開催して、定款の変更をする決議をする必要があります。
株式会社の目的の注意点
株式会社の定款で目的を記載する必要があると解説しましたが、どんな目的でも記載することができるのでしょうか。結論からいうと、会社の目的には最低でも適法性と明確性が必要となります。
適法性
適法性とは、法令や公序良俗に反するものでないことを言います。例えば犯罪を行うなど違法行為を内容とするものは適法性を欠くため会社の目的にすることができません。また、行政書士業務など法人が業務として行えないものも適法性を欠くとされます。
明確性
明確性とは、一般的に第三者にわかる言葉かどうかという意味です。かなり抽象的ですが、特に意味のない造語などは、本人しか意味がわからないため、明確性を欠くと判断される可能性があります。以前は具体性も必要とされましたが、現在では具体性のない目的も定めることが可能となりました。
目的変更の議事録の書き方
会社の目的の記載の仕方は概ね3つあり、まず変更後の定款の条項だけを記載する方法、定款の条数(第〇条)を特定し、変更後の定款の内容だけを記載する方法、もう一つの書き方は変更前と変更後の定款の条項を併記する方法です。最後に新旧対照表を作成する方法です。
定款変更の議事録はどのやり方を採用しても大丈夫です。最終的に株式会社の会社の目的を法務局で登記をするため、第三者がみてわかるように記載する必要があります。中小企業の目的の変更は変更後の内容を記載する方法か、変更前と変更後の内容を記載する方法が一般的だと思いますが、変更後の内容を記載すれば基本的に問題はないかと思います。
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目的変更手続きにかかる費用と期間
目的変更手続きにかかる費用と期間については以下の通りです。
手続きにかかる費用の内訳
目的変更手続きには、以下のような費用がかかります。
登記費用
法務局に支払う登記申請手数料。原則として収入印紙を3万円を用意します。
専門家への依頼費用
行政書士や司法書士など、専門家に依頼する場合の費用。
その他関連費用
書類作成費用や郵送費用など。
目的変更手続きの期間
目的変更手続きの期間は、準備から登記完了までおおよそ1〜2ヶ月程度が一般的です。各ステップの進行状況や、法務局の処理時間によって変動することがあります。
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目的変更時の注意点
目的変更を行う際には、以下の点に注意する必要があります。
- 新たな事業目的が法的に問題ないか確認します。
- 株主や場合によっては取引先に対する説明責任を果たす必要があります。
まとめ
株式会社では、会社の目的外の事を行うことができず、新たな事業を始める場合には、会社の目的を変更して法務局で登記申請をして完了してから始めることになります。許認可を取得する時にも会社の目的に許可を取得したい業種が記載されているかが一つの要件になっている場合もありますので、ご自身でお手続きを行う場合はご注意ください。分からない点があれば、専門家に相談することをお勧めします。