募集株式の発行で株主以外の者から資金調達をする方法

中小企業支援

会社が事業を行うために資金を調達する場合は、会社にある資金を利用するか、銀行から借り入れを行うか、社債を発行するか、株式を発行する方法があります。
銀行からの借り入れを行うには、審査があったり担保を要求されたりと、自社の財産を制限されるデメリットもあり、他にも借り入れがあると銀行の審査が通らず資金を調達できない可能性もあります。
他には、社債を発行する事も考えられますが、中小企業では社債を発行して資金を調達することが難しいとされているため、資金を調達する方法として借り入れ以外に考えられるのは、株式を発行する事が考えられます。
株式を発行するメリットとして、株式を購入したいと考える方がいれば、資金を調達することができ、借り入れと違い返済する必要がない事が考えられます。
今回の記事では、募集株式の発行で資金を調達する手続きについて解説していきたいと思います。
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募集株式の発行とは

株式を引き受ける者を募集して行う株式の発行のことを募集株式の発行といいます。
募集株式の発行をすると、株主が増えたり会社の資金を調達できるというメリットがありますが、株主構成に変化が生じるため、家族経営を行っている中小企業などはその点がデメリットになります。
募集株式を行うには公開会社と非公開会社で手続きが異なりますので下記で解説していきたいと思います。

公開会社の場合

募集株式を発行するには、募集株式の種類、数、払込金額またはその算定方法、現物出資の場合の対象財産の内容・価格、払込期日、株式の発行によって増加させる資本金および資本準備金の額を決定します。(会社法199条1項)
募集事項の決定は原則として取締役会が行うことになり、取締役会が募集事項を決定した時には、払込期日の2週間前までに募集事項を株主に通知し、または公告する必要があります。
公開会社は特定の者に募集株式を引き受ける権利を与える募集株式の発行を第三者割り当てといい、第三者割当てを行うときは、有利発行の規制など注意する必要があります。
募集株式を引き受ける者に、特に有利な払込金額で募集株式を発行する場合は、株主総会の特別決議によって承認される必要があります。
これは、株式の本来の価格よりも低い価格で新株が発行されると既存の株式の価格が下落してしまう可能性があるため、有利発行をする際には不利益を受ける現在の株主の承認が必要とされています。
他に注意するものとして第三者割り当てによって、株式を大量に発行すると、議決権の過半数を超える株主が発生してしまう可能性があります。
そうなると取締役会のみで、支配株主を変更できる可能性があり問題です。
そのため、公開会社において株式引受人の持株割合が2分の1を超えることとなる募集株式の発行について、総株主の10分の1以上の議決権を有する株主が反対を申し出たときには、株主総会の普通決議による承認を要します。

非公開会社の場合

公開会社と違い、非公開会社では、募集事項の決定は株主総会の特別決議によって行います。
非公開会社は基本的に株主の変動が少ないため、株主の変動は株主によって重要な事項なので株主総会の特別決議が必要とされました。
非公開会社でも、定款に定めがある場合で、株主総会の特別決議で募集株式数の上限、払込金額の下限を定めれば、1年間発行を取締役会に委任することができます。

募集株式の払込

株式会社は株式の引受の申し込みをするものを募集して、応じたものに株式を割り当てます。
株式会社は、申し込みをしようとする者に対し、募集事項、払込取扱場所等の通知をして、申込者は氏名または名称、住所、引受を希望する株式の数を記載した書面の交付または電磁的方法により申し込みを行います。
株式の割り当てを受けたものは引受人となるため、払込期日に銀行等の払込場所において払込金額の全額を払い込む義務を負うことになります。
出資を履行した引受人は、払込期日に株主となります。
現物出資をする場合は、裁判所が選任する検査役による調査が必要となりますが、検査役による調査には時間と費用が発生するため、一定の場合は検査役の調査が免除されます。(会社法207条9項)

会社法
第二百七条 株式会社は、第百九十九条第一項第三号に掲げる事項を定めたときは、募集事項の決定の後遅滞なく、同号の財産(以下この節において「現物出資財産」という。)の価額を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。
2 前項の申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、検査役を選任しなければならない。
3 裁判所は、前項の検査役を選任した場合には、株式会社が当該検査役に対して支払う報酬の額を定めることができる。
4 第二項の検査役は、必要な調査を行い、当該調査の結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)を裁判所に提供して報告をしなければならない。
5 裁判所は、前項の報告について、その内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するため必要があると認めるときは、第二項の検査役に対し、更に前項の報告を求めることができる。
6 第二項の検査役は、第四項の報告をしたときは、株式会社に対し、同項の書面の写しを交付し、又は同項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供しなければならない。
7 裁判所は、第四項の報告を受けた場合において、現物出資財産について定められた第百九十九条第一項第三号の価額(第二項の検査役の調査を経ていないものを除く。)を不当と認めたときは、これを変更する決定をしなければならない。
8 募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者に限る。以下この条において同じ。)は、前項の決定により現物出資財産の価額の全部又は一部が変更された場合には、当該決定の確定後一週間以内に限り、その募集株式の引受けの申込み又は第二百五条第一項の契約に係る意思表示を取り消すことができる。
9 前各項の規定は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項については、適用しない。
一 募集株式の引受人に割り当てる株式の総数が発行済株式の総数の十分の一を超えない場合 当該募集株式の引受人が給付する現物出資財産の価額
二 現物出資財産について定められた第百九十九条第一項第三号の価額の総額が五百万円を超えない場合 当該現物出資財産の価額
三 現物出資財産のうち、市場価格のある有価証券について定められた第百九十九条第一項第三号の価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えない場合 当該有価証券についての現物出資財産の価額
四 現物出資財産について定められた第百九十九条第一項第三号の価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士又は税理士法人の証明(現物出資財産が不動産である場合にあっては、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価。以下この号において同じ。)を受けた場合 当該証明を受けた現物出資財産の価額
五 現物出資財産が株式会社に対する金銭債権(弁済期が到来しているものに限る。)であって、当該金銭債権について定められた第百九十九条第一項第三号の価額が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合 当該金銭債権についての現物出資財産の価額
10 次に掲げる者は、前項第四号に規定する証明をすることができない。
一 取締役、会計参与、監査役若しくは執行役又は支配人その他の使用人
二 募集株式の引受人
三 業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者
四 弁護士法人、監査法人又は税理士法人であって、その社員の半数以上が第一号又は第二号に掲げる者のいずれかに該当するもの

会社法 | e-Gov法令検索より引用

まとめ

公開会社と非公開会社で手続きが異なりますが、募集株式を発行した後には登記の手続きも行うことになりますので、細かい手続きについては、専門家に書類を作成してもらうことをお勧めいたします。

行政書士青嶋雄太
この記事を書いた人
行政書士青嶋雄太

私は約10年間にわたり法律関連の仕事に従事してきました。司法書士事務所と行政書士事務所での経験を通じて、多くの案件に携わり、幅広い視点から問題を解決してきました。
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