建設業を営む上で、事業の終わりは新たな始まりにもつながります。しかし、その過程で最も重要な一歩が、建設業許可の廃業手続きです。この手続きを怠ることは、未来への大きなリスクを背負うことに他なりません。本記事では、廃業手続きの必要性から、その基本的な流れ、必要な書類の準備方法まで、一歩一歩丁寧に解説していきます。
建設業許可の廃業手続きの重要性
建設業許可の廃業とは、許可を持っている建設業者が何らかの事情により許可の廃業を行うことをいいます。具体的な事情としては、会社の破産、事業者の死亡、事業者自身の意思による廃業などがあります。
建設業許可の一部廃業と全部廃業
建設業許可の一部廃業と全部廃業の違いは以下の通りです。
一部廃業
現在、複数の業種で建設業許可を受けている場合に、一部の業種が必要なくなった時などに、その業種を一部廃止することをいいます。例えば、専任技術者が退職し、一部の業種について代わりの専任技術者がいない場合、その業種のみの許可を返納することを一部廃業と言います。
全部廃業
現在受けている建設業許可をすべて辞めることを全部廃業といいます。例えば、経営業務の管理責任者が急な退職等で欠けて、代わりがいない場合も許可を維持することができないので、全部廃業しなければなりません。
これらの手続きにはそれぞれ必要な書類があり、一部廃業の場合は、廃業届だけではなく変更届出書や届出書、専任技術者一覧など色々な書類が必要になってきます。
廃業手続きの重要性
廃業手続きの重要性については以下の点が挙げられます。
法的義務
廃業が発生した場合、法律により廃業届を許可行政庁に提出する必要があります。この廃業届を提出しないと、「10万円以下の過料」に該当する可能性があります。
再許可取得の影響
廃業届を提出せずにそのまま放置すると、許可行政庁に許可の抹消という記録が残り、再度許可を受けようと思っても、許可を持っていた期間等が認められない可能性があります。これは、再許可取得時に支障をきたす可能性があります。
税務上の責任
廃業届の提出後は、個人事業主としての最終的な精算手続きが必要になります。これには、確定申告や残った借入金の処理などが含まれます。
廃業となる事項
廃業等の理由により建設業を営業しなくなった場合には、30 日以内に廃業届を提出しなければなりません
1.建設業者である個人事業主が死亡したとき
2.会社合併により建設業者である会社が消滅をしたとき
3.建設業者である会社が破産手続き開始の決定により解散したとき
4.それ以外の理由により 建設業者である会社が解散したとき
5.建設業許可の要件を満たさなくなったとき
6.建設業許可の更新手続きを行わなかったとき
7.許可を受けた建設業を廃止したとき
廃業届の提出期限については、廃業となった日から30日以内に許可行政庁に提出する必要があります。これらの手続きを怠ると罰則の対象となる可能性がありますので、注意が必要です。また、廃業届を提出せずにそのまま放置すると、許可行政庁に許可の抹消という記録が残り、再度許可を受けようと思っても、許可を持っていた期間等が認められない可能性もあるため、廃業届をきちんと提出することが重要です。
(廃業等の届出)
建設業法 – e-Gov法令検索より引用
第十二条 許可に係る建設業者が次の各号のいずれかに該当することとなつた場合においては、当該各号に掲げる者は、三十日以内に、国土交通大臣又は都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
一 許可に係る建設業者が死亡したとき(第十七条の三第一項に規定する相続人が同項の認可の申請をしなかつたときに限る。)は、その相続人
二 法人が合併により消滅したとき(当該消滅までに、合併後存続し、又は合併により設立される法人について第十七条の二第二項の認可がされなかつたときに限る。)は、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。以下同じ。)であつた者
三 法人が破産手続開始の決定により解散したときは、その破産管財人
四 法人が合併又は破産手続開始の決定以外の事由により解散したときは、その清算人
五 許可を受けた建設業を廃止したとき(第十七条の二第一項又は第三項の認可を受けたときを除く。)は、当該許可に係る建設業者であつた個人又は当該許可に係る建設業者であつた法人の役員
(登録の更新)
第二十六条の八 第二十六条第五項の登録は、三年を下らない政令で定める期間ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う。
2 前三条の規定は、前項の登録の更新について準用する。
届出をすべき者と確認資料
廃業の理由 | 届出すべき者 | 確認資料 |
建設業者である個人事業主が死亡したとき | 相続人 | 届出者の印鑑証明書及び戸籍謄本 |
会社合併により建設業者である会社が消滅をしたとき | 消滅時に役員であった者 | 役員個人の印鑑証明書及び当該法人の役員であったことを確認できる解散登記後の閉鎖事項全部証明書 |
建設業者である会社が破産手続き開始の決定により解散したとき | 原則として破産管財人 | ① 裁判所発行の「破産管財人及び印鑑証明書」又は② 裁判所発行の「破産管財人資格証明書」及び破産管財人本人の印鑑証明書 |
法人が合併又は破産手続き開始の決定以外の事由により解散したとき | 清算人 | 当該法人の清算人であることを確認できる履歴事項 全部証明書及び法務局が発行する清算人の印鑑証明書 |
許可を受けた建設業を廃止したとき | <法人> 代表者 <個人> 本人 | (代表者)その役員個人の印鑑証明書及び当該法人の役員であることを確認できる履歴事項全部証明書 (代表者(申請人)以外の役員) その役員個人の印鑑証明書及び当該法人の役員であることを確認できる履歴事項全部証明書 (本人) 本人の運転免許証等、ただし、住所、氏名に変更があるときは、事前に変更届を提出してくだ さい。 |
一部廃業 許可を受けた建設業のうち、一部を廃止したとき | 法人・・・その役員 個人・・・本人 | 原則不要 |
※具体的な書類などは許可行政庁によって、異なりますので確認は必要です。
建設業許可は許可業種ごとに取得しますが、廃業は許可を受けている一部の建設業を廃止した場合も、廃業届出を提出する必要があります。
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建設業許可の取消処分
建設業許可の取消処分について、以下のとおり説明をします。
建設業許可の取消処分の理由
- 不正手段で建設業の許可を受けたり、営業の停止に違反して営業したりすると、許可取消処分の対象となります。
- 経営業務の管理責任者または専任技術者がいなくなった場合、許可は取り消されます。
- 一括下請負禁止規定の違反や独占禁止法、刑法などの他の法令に違反した場合などで、情状が特に重いと判断されると指示処分や営業停止処分なしで直接許可取消処分となることもあります。
廃業後の影響
- 建設業許可を取り消されると5年間、新たに建設業許可を取得することができなくなります。
- 建設業許可を取り消された法人の役員等が、別の会社で役員等になる場合も、5年間建設業許可の取得はできません。
施工中の工事について
建設業許可がその効力を失った場合や取消処分を受けた場合でも、許可がその効力を失う前又は当該処分を受ける前に締結された請負契約に係る建設工事に限り施工することができます。ただし、許可の取消し等の処分があったことと引き続き工事を施工することを、処分を受けた建設業者は注文者へ通知しなければならない。この通知は処分のあった日から2週間以内に行わなければならないと定められています。
建設業許可を取り消されると5年間、新たに建設業許可を取得することができなくなります。
まとめ
建設業許可の廃業手続きは、適切に行わないと多くのリスクを伴うため、非常に重要です。この記事では、廃業手続きの必要性、基本的な流れ、必要な書類とその準備方法について詳しく説明しました。
行政庁からの処分を受けると、すぐに建設業許可が得られなくなる可能性があるので、届出を怠らないようにご注意ください。
※手続きでご不明点がございましたら、是非当事務所に下記の問い合わせフォームからご相談ください
記事の内容は一般的な内容となっており、個別具体的な案件によっては結論が異なることもございます。
そのため、ご自身でお手続きをする際は、当事務所では責任を負いかねますのでご容赦ください。