建設業界は、その規模と影響力から、社会の発展において重要な役割を果たしています。しかし、この業界に参入するためには、一定の基準を満たす必要があります。それが建設業許可です。
この記事では、建設業許可の基本的な知識から、許可が必要となる建設業の種類、そして許可取得のメリットについて詳しく解説します。また、許可を取得するための具体的な条件や、申請の流れ、さらには許可取得後の義務と管理についても詳しく説明します。
建設業許可を取得することで、事業の拡大や公共工事への参入が可能となります。しかし、そのためには法的要件を満たし、必要な資格と経験年数を有することが求められます。また、許可を維持するためには、定期的な更新と報告、そして法令遵守が必要となります。
これらの情報を理解することで、建設業許可の重要性とその取得方法についての理解が深まるでしょう。
建設業許可とは?
建設業許可とは、建設業を営む事業者が取得する必要がある許可のことをいいます。この許可は、国土交通大臣または都道府県知事から与えられます。許可の申請には一定の取得要件が定められており、工事の種類などによっても取得すべき許可や申請方法が異なります。
建設業許可には、大臣許可と知事許可の2種類があり、営業所の置き方の違いによって区別されます。営業所を一つの都道府県に置く場合は知事許可、営業所を複数の都道府県に置く場合は大臣許可が必要です。
建設業許可を取得するためには以下の4つの要件を満たす必要があります。(現在は適切な健康保険に加入していることも必要です)
- 経営業務の管理責任者を設置する必要がある
- 専任技術者を設置する必要がある
- 安定した財産を保有している
- 欠格要件に当てはまらない
許可が必要な建設業の種類建設業許可が必要な業種は2種類の一式工事(土木一式工事・建築一式工事)と27種類の専門工事の合計29種類の業種があります。それぞれの業種に応じて請け負える工事の種類が決まっています。
建設業許可の業種 | 詳細 |
土木一式工事 | 土地や建物の改良、開発、維持管理などを行う工事 |
建築一式工事 | 建物の設計、施工、改修、維持管理などを行う工事 |
大工工事 | 木材を使用して建物を建てる工事 |
左官工事 | 壁や床などの表面仕上げを行う工事 |
とび・土工工事 | 土地の掘削や盛り土、基礎工事などを行う工事 |
石工事 | 石材を使用して壁や床などを作る工事 |
屋根工事 | 屋根の施工や修理を行う工事 |
電気工事 | 電気設備の設置や修理を行う工事 |
管工事 | 水道やガスなどの配管工事 |
タイル・れんが・ブロック工事 | タイル、れんが、ブロックを使用した壁や床の施工 |
鋼構造物工事 | 鋼材を使用した建物や構造物の施工 |
鉄筋工事 | コンクリート構造物の鉄筋施工 |
舗装工事 | 道路や広場などの舗装工事 |
しゅんせつ工事 | 土地の排水工事 |
板金工事 | 金属板を使用した屋根や壁の施工 |
ガラス工事 | ガラスの取り付けや交換を行う工事 |
塗装工事 | 建物の内外装の塗装工事 |
防水工事 | 建物の防水処理を行う工事 |
内装仕上工事 | 建物の内装工事 |
機械器具設置工事 | 機械や器具の設置工事 |
熱絶縁工事 | 建物の断熱工事 |
電気通信工事 | 電話やインターネットなどの通信設備の設置工事 |
造園工事 | 庭園の設計や施工、維持管理を行う工事 |
さく井工事 | 井戸の掘削や修理を行う工事 |
建具工事 | ドアや窓などの建具の取り付けや修理を行う工事 |
水道施設工事 | 水道設備の設置や修理を行う工事 |
消防施設工事 | 消防設備の設置や修理を行う工事 |
清掃施設工事 | 清掃施設の設置や修理を行う工事 |
解体工事 | 建物の解体工事 |
建設業許可取得のための条件
建設業許可取得のための条件について説明します。
建設業許可を取得するためには、以下の4つの「許可要件」を満たし、かつ「欠格要件」に該当しないことが必要です。
経営業務の管理能力
経営業務の管理責任者等の設置が必要です。具体的には、法人であれば役員のうち1名以上、個人事業であればその個人事業主か支配人が、以下のいずれかに該当することが必要です。
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者であること。
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務を管理した経験を有する者であること。
- 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者であること。
専任技術者
営業所に常勤する専任技術者の設置が必要です。専任技術者になるには、取りたい業種に関連する国家資格を持っているか、取りたい業種での実務経験が10年以上あることが必要です。
専任技術者になるためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 取りたい業種に関連する国家資格を持っていること。
- 取りたい業種での実務経験が10年以上あること。
また、特定の学科を卒業している場合、実務経験の必要年数が短縮されます。具体的には、大学卒業後3年以上、高等専門学校卒業後3年以上、専門学校卒業後5年以上、高等学校等卒業後5年以上の実務経験が必要となります。
誠実性
不正、不誠実な行為をしないことが求められます。
財産的基礎
一定の自己資本や資金調達能力を証明することが必要です。
欠格要件
欠格要件に該当しないことが必要です。
建設業許可申請の流れ
建設業許可申請の流れは以下の通りです。
申請書類の準備
建設業許可を申請する際に必要な書類は大きく分けて以下の3つがあります。
- 専用の申請書類一式(様式)
- 役所などが発行する公的証明書
- 各種確認書類
提出先と審査の流れ
許可申請書及び添付書類は、許可を受けようとする場合、許可行政庁に提出することが必要です。その後、以下の流れで審査が行われます。
- 取りたい許可の種類を決める
- 許可条件を満たしているか確認
- 申請及び提出書類の収集・作成
- 窓口にて手数料納付及び書類提出
- 提出書類の審査期間(行政側)
- 許可通知書の受理(許可取得完了)
初めて申請する方であればステップ1からステップ4までに1ヶ月程度は時間がかかると思われます。ステップ5の審査には早くとも1ヶ月はかかりますので、建設業許可の取得にかかる期間は2ヶ月程度を目安とされることをお勧めします。
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許可取得後の義務と管理
建設業許可を取得した後、事業者には以下の義務と管理が課せられます。
定期的な更新と報告
建設業許可の有効期限は許可日から5年となっており、その後も建設業許可を継続したい場合は、有効期限内に許可の更新手続きを行う必要があります。また、許可取得後は、毎年、事業年度終了後から4カ月以内に決算の変更届(事業年度報告書)を提出する必要があります。
許可取得後の法令遵守
建設業許可を取得した事業者は、建設業法等の関連法令を遵守しなければなりません。具体的には、以下のような義務があります。
変更の届出義務
許可の要件等に変更があれば、定められた期間内に変更の届出が必要です。
標識の掲示、帳簿の備付と保存及び営業に関する図書の保存義務
許可業者は標識の掲示義務があり、店舗及び建設工事の現場ごとに公衆の見やすい場所に掲げます。
契約締結に関する義務
請負契約の締結に関しては、着工前書面契約、契約書への記載必須事項の義務があります。
工事現場における施工体制の義務
工事現場における施工体制に制限が課せられます。
下請け代金の支払いに関する義務
注文者から請負代金の出来高払いまたは竣工払いを受けたときは、その工事を施工した下請業者に対して、1ヶ月以内に下請け代金を支払う義務があります。
これらの義務を遵守することは、許可の継続や更新、そして法令遵守にとって重要です。違反すると行政処分の対象になる可能性があります。
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まとめ
建設業界における成功の鍵は、しばしばその基盤となる許可と資格にあります。建設業許可とは、単なる形式的な手続きではなく、事業の信頼性を高め、新たな市場への扉を開く重要な手続きです。このブログ記事では、建設業許可の基礎から、その取得がもたらすメリット、必要な条件、申請の流れ、そして許可取得後の義務に至るまで、一連の流れを詳しく解説しました。
許可が必要な建設業の種類を理解することで、自社のビジネスモデルを適切に位置づけ、事業拡大の第一歩を踏み出すことができます。また、公共工事への参入機会を得ることは、企業の成長にとって計り知れない価値があります。しかし、そのためには法的要件の概要を把握し、必要な資格と経験年数を満たすことが不可欠です。
申請書類の準備から提出先と審査の流れの理解、さらには許可取得後の法令遵守に至るまで、この記事は建設業許可を取得し、維持するために必要な全てを網羅しています。建設業許可を通じて、ビジネスの可能性を最大限に引き出し、業界内での競争力を高めましょう。
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